2024年1月第一部会の審議

 厚生労働省は、2024年1月26日、薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会を開催。同日の承認関係の審議では、新有効成分含有医薬品として低亜鉛血症治療薬「ジンタス錠25mg・50mg」(ヒスチジン亜鉛水和物)を含む3件について審議され、いずれも承認が了承された。

低亜鉛血症と亜鉛欠乏の診断指針

 「低亜鉛血症」は血清亜鉛値が低下し、体内の亜鉛が不足した状態。血清亜鉛値の基準値は80~130µg/dLで、80µg/dL未満は低亜鉛血症となる。60~80µg/dL未満は「潜在性亜鉛欠乏」、60µg/dL未満は「亜鉛欠乏症」に該当する。これらの数値に加え、臨床症状・所見と検査所見として亜鉛欠乏がみられる場合に、潜在性亜鉛欠乏または亜鉛欠乏症と診断される。

亜鉛欠乏の原因

 亜鉛欠乏の原因のひとつに慢性疾患がある。肝疾患、糖尿病、慢性炎症性腸疾患、ネフローゼ症候群・腎不全・透析などはしばしば血清亜鉛値を低下させる。また、キレート作用のある薬剤は、体内の亜鉛と結合して尿中に排泄されるため、長期に服用すると亜鉛欠乏をきたす。その他、静脈・経腸栄養において亜鉛の補充が不十分な場合も亜鉛欠乏の要因になり、近年の高齢化の進展と慢性疾患罹患者の増加を鑑みると、亜鉛欠乏をきたしている患者は増加していると考えられる。

ペニシラミン、レボドパ、炭酸リチウム、インドメタシン、イミプラミン、フルラゼパム、メトホルミン、チアマゾール、プロピルチオウラシル、アロプリノール、カルバマゼピン

症状の発症機序と種類

 亜鉛欠乏になると、亜鉛が関わる酵素活性が低下し、体内での蛋白質合成機能の低下を招く。そのため、蛋白合成が盛んな細胞・臓器で障害が生じやすく、また亜鉛が高濃度に存在する細胞や臓器で亜鉛欠乏症状が発症しやすい。おもな症状としては、皮膚炎・脱毛、貧血、味覚障害、発育障害(低身長・体重増加不良)、性腺機能不全(特に男性)、食欲低下、下痢、骨粗鬆症、創傷治癒遅延、易感染性などが挙げられる。

亜鉛欠乏時の対応と亜鉛補充療法

 血清亜鉛値が低下している場合、まず食事療法として牡蠣や豚レバー、牛肩肉(赤肉・生)といった亜鉛含有量の多い食品の摂取が推奨される。未精製の穀物や小麦、豆類(ごま、大豆、ピーナッツ、インゲン豆、とうもろこし)といったフィチン酸を多く含む食品や、カルシウム、コーヒー、オレンジジュース、アルコール、食物繊維の過剰摂取は亜鉛の吸収を阻害するため注意する。

 一方、亜鉛欠乏症の症状がみられ、血清亜鉛値が低いと、薬物療法として亜鉛補充療法が必要となる場合がある。亜鉛欠乏症の治療指針では、「亜鉛として成人50~100mg/日、小児1~3mg/kg/日または体重20kg未満で25mg/日、体重20kg以上で50mg/日を分2で食後に経口投与。症状や血清亜鉛値を参考に投与量を増減する」とある。亜鉛補充療法は、「褥瘡予防・管理ガイドライン」などでも創傷治癒効果について言及されている。なお、亜鉛投与時には銅や鉄欠乏をきたすこともあるため、注意が必要である。


・「亜鉛欠乏症の診療指針2018」一般社団法人日本臨床栄養学会編
・低亜鉛血症の医療関係者向け情報サイト「低亜鉛.jp」:https://teiaen.nobelpark.jp/
・栄養ニューズオンライン:https://eiyonews.com/