医療費抑制が検討され、薬価差益減や調剤報酬減に向かう中で、患者から求められる薬局になるためには、どのような条件が必要になるのでしょうか。規制改革の進捗など国内薬事行政の動向、海外のヘルスケア・薬局動向、AIの活用など、先鋭的なテーマを取り上げた株式会社カケハシ主催のイベントPharmacy Leaders Day 2023より、株式会社サンキュードラッグの藤井孝太郎氏の講演をレポートします。
株式会社サンキュードラッグ
経営企画室長
藤井 孝太郎 氏
人口減少と高齢化
サンキュードラッグは、北九州市と下関市に、ドラッグストア42店舗(うち調剤併設30店舗)、調剤専門薬局33店舗を展開している企業です。
近年、北九州市と下関市は人口減少が続いており、2040年には、北九州市では2020年時点から約13万人(2020年時点の14%)の減少、下関市では約6万人(2020年時点の23%)の減少がそれぞれ見込まれています。北九州市全体の高齢化率(65歳以上人口が総人口に占める割合)は30%超、また、下関市は二次医療圏の需要の減少幅が大きくなる見込みです。サンキュードラッグ経営企画室長の藤井孝太郎氏は「こうした薬局経営にとって難しい環境で、どのように制度変化に向き合い、テクノロジーを活用していくか、この数年が勝負となると考えています」と話します。
市場創造とデータ活用
サンキュードラッグは人口減少と高齢化が進む北九州市と下関市のインフラであり続けたい、とし、そのためのポイントの1つとして、藤井氏は『市場創造とデータ活用』を解説しました。藤井氏は「サンキュードラッグではポイントカードを導入していますが、ポイントカードで得られるデータから顧客の動向が見えてきますので、これをお客様の需要の把握に活かしていきます。フリーペーパー、アプリ、店内放送、クーポン券などから得られるデータの分析も潜在需要の確認に活かしています」と自社のデータ活用を紹介します。藤井氏は、潜在需要の商品は、顕在需要の商品と異なり、購入いただきたい方々をイメージしセグメントした上でその方々に情報を届ける必要があると説明し事例を紹介しました(表1)。
デジタル・DX化
藤井氏は、昨今薬局に求められているDXについて、単純にアナログ媒体をデジタルに変更することではなく、顧客ごとに情報・価値伝達を可能し、行動変容を促しその結果評価できること、と話しました。「ドラッグストアで商品を再度購入いただくためのしかけを作り、顧客の満足を獲得し、頼られる存在になっていくことをデジタルのテクノロジーを使って実現していくことが必要と考えています。そこでは、最適なタイミングで、最適なメッセージを、最適な手段でアプローチすることが求められると考えています」と話します。
患者に喜ばれる施策
藤井氏は、サンキュードラッグの調剤薬局における5つの戦略を紹介しました(表2)。②在宅処方箋の獲得として、藤井氏は「今後の点数化を見据えて自社の管理栄養士による訪問栄養相談を実施しています」と施策を紹介しました。この栄養相談では、月2回30分~60分で訪問した上で、医師からの指示箋や、訪問記録書の医師とケアマネへのフィードバックに対応するというもので、藤井氏は「予想以上に患者さんやご家族、医師に喜ばれる取り組みで、地域の中で今後積極的取り組むべきこと」と振り返りました。