認知症の新薬レカネマブと検査薬が承認了承

 厚生労働省薬事・食品衛生審議会の8月21日の部会にて、アルツハイマー病の新薬レカネマブの承認が了承された。適応は「アルツハイマー病による軽度認知障害及び軽度の認知症の進行抑制」。

 レカネマブとともに承認が了承されたのがフルテメタモル(ビザミル静注)とフロルベタピル(アミヴィッド静注)。フルテメタモルとフロルベタピルは、脳内のアミロイドβの沈着状況を評価するためのポジトロン断層撮影(PET)用の放射性医薬品。これらは「アルツハイマー型認知症が疑われる認知機能障害を有する患者の脳内アミロイドベータプラークの可視化」として承認取得しているが、保険適用はない。今回、レカネマブによる早期介入の重要性が考慮され、軽度認知障害が適応に加わり、保険適用も期待される。

アルツハイマー病による軽度認知障害とは

 アルツハイマー病には病期によって、発症前段階、アルツハイマー病による軽度認知障害、アルツハイマー病による認知症に3分類される。この2段階目にあたるアルツハイマー病による軽度認知障害は、記憶障害が中心となり、正常ではないが認知症でもなく、認知機能の低下があるものの基本的な日常生活機能は正常、という状態を指す。診断基準が複数あるが、多数の被験者のデータから確立されているPetersenの診断基準では次のように示されている。

●以前と比較して認知機能の低下がある。これは本人・情報提供者、熟練した臨床医のいずれかに指摘されうる
●記憶、遂行、注意、言語、視空間認知のうち1つ以上の認知機能領域における障害がある
●日常生活動作は自立している。昔よりも時間を要したり、非効率であったり間違いが多くなったりする場合もある
●認知症ではない

軽度認知障害の検査

 認知症以外に軽度認知障害をもたらす因子として、脳の外傷、パーキンソン病、HIV感染、薬剤性(抗パーキンソン病薬、抗てんかん薬、利尿薬、降圧薬、消炎鎮痛薬、ステロイド、抗菌薬、H2受容体拮抗薬、抗コリン薬、喘息治療薬、抗ヒスタミン薬など)があり、せん妄やうつ病も認知機能を低下させうる。認知症を診断する上ではこれらの疾患・病態と鑑別が必要となる。

 また、認知症の病型はアルツハイマー病以外に、前頭側頭葉変性症、レビー小体病、血管疾患があり、認知症の病型診断のためにCTやMRIによる形態画像の検査、脳機能画像検査(機能的MRI、SPECT、PETなど)、血液・脳脊髄液検査が用いられる。

 アルツハイマー病では症状発現前時点からアミロイドβの脳内沈着が始まる。レカネマブの適切な投与のために軽度認知障害がアルツハイマー病によるものかを確認すべくPET検査や脳髄液検査が増える可能性が考えられる。一方で、これらの検査では費用や実施施設、侵襲性などの面で課題が指摘されている。


【参考情報】

・ミクスオンラインニュース2024年8月22日     ・各製品添付文書
・日本神経学会監修認知症疾患診療ガイドライン2017     ・DSM-5精神疾患の分類と診断のの手引
・近畿大学高度先端総合医療センターHPPET分子イメージング部     ・NHK首都圏ナビもっとニュース2024年8月24日

本記事の情報は2023年8月時点の情報をもとに作成しており、最新情報は変更となる可能性があります。