令和6年度調剤報酬改定では、地域支援体制加算の地域医療への貢献に係る実績に関する項目に「小児特定加算」が追加され、今回新設された在宅薬学総合体制加算2に小児特定加算や乳幼児加算が要件とされているなど、小児患者への対応が重要視されています。小児の薬用量と臨床検査値の考え方について復習してみてください。

監修
明治薬科大学薬学部 教授
薬学教育研究センター臨床薬学部門

小児医薬品評価学研究室

石川 洋一 氏

 小児の薬用量は、薬剤学的因子や生理学的因子などさまざまな要因で決まります(表1)。小児の場合は、各成長段階で臨床試験を行うことは現実的ではありません。そのため、限られた小児臨床試験で得られた情報をもとに標準薬用量が検討されます。

 小児に薬剤を投与する際は、添付文書などに記載があればそれに従うのが原則です。記載がない場合は、小児薬用量についてまとめた実用書や海外の症例報告などを参考に検討します。ただし、薬用量は薬剤ごとにエビデンスに差があることを理解しておくことが重要です。

 また、薬用量の計算・換算の方法は多様ですが、薬物代謝能は、体重よりも成人との体表面積比により類推できることからAugsberger-Ⅱの式やそれから作られたvon Harnackの換算表(表2)が簡便で実用的なツールとして広く普及しています。

 このほか、アロメトリー則に基づいた小児薬用量推定法などがあります。アロメトリー則とは、生物の機能と大きさ(体重)との関係を示す生物学的な法則のことで、薬物除去能力(クリアランス)と体重との関係にアロメトリー則が適用されます。

 成人の薬用量から小児の薬用量を検討する場合、体重による補正(mg/kg)や体表面積による補正(mg/m2)を加えるのが一般的です。多くの薬剤では、体表面積を用いると血中濃度を成人と同等に保つことができるといわれています。しかし、薬物の代謝、排泄を担う肝臓、腎臓の全体重に占める割合が幼児期では成人より大きいため、薬用量が多く見える期間があります。

 身体の成長に伴って、肝臓、腎臓は大きくなっていきます。また、肝臓、腎臓に発現する薬物代謝酵素やトランスポーターの量も変化し、臓器としての機能が充実していきます。腎臓については糸球体濾過などの機能は生後1~2歳頃までに成熟します。肝臓については、CYP3A4やCYP2C9の発現が出生後に急激に活発になり、1歳で約70~80%に達し、2歳頃までにはほぼ100%になります。身体の成長に伴って2歳以降も肝臓と腎臓は大きくなっていきます。

 2歳~4歳以降では体表面積が臓器の成長とよく相関することから、薬剤の血中濃度を一定に保つためには体表面積による補正が有用であるとされています。2歳以下では、臓器の機能が発達途上にあるため、投与量を体表面積による補正よりも低く見積もる必要があります。

 小児の処方箋を受けたら、年齢と体重を必ず確認しましょう。