薬局ビジョンに掲げられてきた対人業務の充実に加え、2025年の医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)改正では調剤業務の一部外部委託が認められ、業務の進め方にも新たな選択肢が生まれた。一方、現場は日々の対応に追われ、変化への向き合い方に悩む声も少なくない。こうした制度・環境の変化のなかで2026年度診療報酬改定が行われる。本稿では、一般社団法人 薬局DX推進コンソーシアム事務局長 中﨑正太郎氏に、今後の制度の動きを踏まえ、薬局の変容や、それに伴って求められる意識の変化などについてお話を伺った。

一般社団法人 薬局DX推進コンソーシアム 事務局長
中﨑 正太郎 氏


※本記事は2025年12月に実施した取材をもとに構成しています。制度の詳細や解釈については、その後の中医協での検討等により変更される可能性がありますのでご留意ください。

2026年度改定の核心
薬局ビジョンの実現と対人業務への移行

Q 2025年12月9日に「令和8年度診療報酬改定の基本方針」が示されました。これまでの診療報酬改定全体の議論を通して、どのような印象を持ち、どのようなメッセージを読み取りましたか?

中﨑氏 まず率直な印象として、「すごいことになりそうなメッセージが随所にみられる」と感じました。特に印象的だったのは、2015年に策定された『薬局ビジョン』と、現在の薬局の実態との乖離に踏み込んで言及された点です。

 中医協(中央社会保険医療協議会)からの資料では、立地に依存し処方箋集中率の高い、いわゆる門前型薬局や医療モール型薬局の割合が、むしろ増加していることが示されました。国としても、この状況を問題視していることが明確になったと受け止めています。今後、何らかの対応が取られる可能性は高く、その動向を注視しています。

 国が一貫して目指しているのは、薬局ビジョンの実現です。そのため今後は、薬局がどれだけ対人業務へシフトできているかを、より直接的に診療報酬で評価する方向に進むのではないかと予測しています。

 一方で、対人業務にシフトするからといって、対物業務を置き去りにすることはできません。対物業務をいかに効率化しつつ、確実に対応するかが課題になります。その流れのなかで、0402通知で示されている非薬剤師との連携や調剤業務の一部外部委託が、今後どのように位置づけられていくのかが重要なポイントになると考えています。

Q 今回の改定では「医療DXの更なる推進/評価」といった文言も目立ちます。医療DXを前提とした制度設計が進むなかで、薬局にはまず何が求められるとお考えですか?

中﨑氏 正直に言えば、薬局における医療DXは、まだこれからの段階だと思っています。技術や仕組み以前に、薬剤師自身のスタンスをどう変えられるかが大きな課題です。

 調剤業務は、極端に言えばDXを使わなくても薬剤師だけで完結してしまいます。そのため、医療DXを取り入れる必然性を現場で感じにくく、行動変容が起きづらい構造があります。この点は、非薬剤師による調剤補助(0402通知)が、なかなか広がらない状況とも共通していると感じています。

 しかし今後、薬局が本格的に対人業務へシフトしていくためには、調剤業務などの対物業務を「誰が担い、どのように行うのか」を明確にしなければなりません。薬剤師自身が医療DXを活用しながら、業務を設計し、指示し、任せていく体制を整えることが不可欠になります。

薬局で効率化できる業務を考察する

Q 薬局DX推進コンソーシアムでは、外部委託や医療DXに関わるさまざまな取り組みを行っています。活動を通して感じる「薬局業務における効率化の余地」とは、どのような点だとお考えですか?

中﨑氏 薬局業務には「デジタル化されていない、あるいは連携されていない部分」が意外と多いように見受けられます。レセコンや電子薬歴、調剤機器といった個別の機器は導入されていますが、それらの間の業務がアナログのまま残っているケースが少なくありません。

 例えば、訪問診療後の処方変更に対応する場面では、事前の情報共有を手書きで行っていたり、服用期間などはExcelで管理していたりします。情報共有の際には紙やデータをコピーしたり、薬局ごとに異なるシステムを使っているため、同じ情報を何度も入力し直すといったことも、現場では日常的に起きています。

 このように、一部で機器やシステムを使っていたとしても、連携の過程で情報が分断されてしまっています。このような状態では、「医療DXが進んでいる」とは言い難いのが実情だと思います。そこで、本コンソーシアムでは業務を一気通貫でデジタル上でやり取りできる仕組みの検討を進めています。実現すれば、事務作業を大幅に削減することもできるでしょう。本コンソーシアムには薬局だけでなく多くの企業も参加しているため、ともに考え、企業が作り、薬局が実行する流れで検証し、実用化された際には広く活用されることを目指しています。

Q 薬局において医療DXが進まない要因とは?

中﨑氏 最も大きな要因は、やはりコスト面の課題です。IT化やデジタル化を進めるには、ある程度の初期投資が必要になります。次に大きいのは、デジタルリテラシーの問題です。「タブレットが使えない」「紙でないと業務ができない」といった声は今も少なくありません。さらに先述したことではありますが、基本的に調剤などの薬局業務は、薬剤師だけで完結できてしまうため、ITを導入する必要性をあまり感じていない、むしろ導入することで作業が煩雑になるという意識も要因になっていると思われます。

Q 「作業が煩雑になる」とは具体的にどのようなことでしょうか?

中﨑氏 これは外部委託での一包化業務にも通じる話ではありますが、委託元の薬局が処方箋をレセコンに入力しただけで、イメージ通りのものが返ってくるわけではありません。受託側の薬局に「服薬開始はいつで、何日間か」「この薬剤は別包にする」「朝は赤、昼は緑、夕は青色の線を引くなど分包紙のレイアウトはどうするか」といった詳細かつ正確な指示を出す必要があります。同じ薬局内であれば、口頭など側で補足するといったこともできますが、外部委託の場合は受託薬局にこうした細やかな指示を出さなくてはならず、さらにITに苦手意識がある方がシステムを通して行う場合、なかなか難しい部分かとも思います。

 ただし、指示が不十分であれば、依頼とおりに一包化された薬剤は返ってきません。使いやすいシステムの選択に加え、誰かに任せるための指示を、手間や負担と捉えない意識と正確に指示を出す力を身に付けることが重要だと考えています。

外部委託の展望と課題

Q 2025年5月に公布された薬機法改正により、調剤業務の一部外部委託が認められ、2027年に向けて具体的な動きが加速すると思われます。さらに2026年度の診療報酬改定を受け、制度面からも後押しされると考えられます。
外部委託で認められている業務範囲は、現状では錠剤の一包化に限られますが、今後、業務範囲はどのように広がっていくと考えられますか?

中﨑氏 薬剤の一包化は、外部委託が最も難しい調剤業務と考えられてきました。2024年7月より行われた調剤業務の一部外部委託に関する実証事業において、その一包化に対応できたことを踏まえると、他の業務についても外部委託へのハードルは必ずしも高くないのではないかと考えています。

 厚生労働省は、外部委託に際して効率化と安全性の両立を重視しています。外部委託は、効率性の高い機械を用いる業務であること、そして医薬品の安全性が確保されることが前提となります。そのため、調剤業務の一部外部委託については、まずは錠剤の一包化に限定して検証が進められました。現行の実証事業では、漢方薬や分包品といわれる錠剤ではないパッキングされた薬剤や、鑑査や品質管理の難しさといった観点から散剤の外部委託は認められていません。受託薬局で一包化された薬剤は委託薬局に返送され、委託薬局で最終鑑査を行ったうえで、患者さんへの服薬指導と交付が行われます(図)

 しかし、実際の在宅医療の現場では、一包化した薬剤をさらにホチキスやセロハンテープで1回の服用分ごとにまとめたり、おくすりカレンダーにセットしてお渡しするケースも少なくありません。将来的に、漢方薬や分包薬、散剤も含めて、すべての一包化に受託薬局で対応できるようになれば、こうしたセット作業まで受託薬局で行い、患者さんへ直接配送するという形も視野に入ってきます。これが実現すれば、委託薬局側では対人業務により多くの時間を割くことが可能になります。

 もちろん、そのためには医薬品の安全性をいかに担保するか、また委託薬局・受託薬局それぞれの業務と責任範囲を明確にすることが不可欠です。外部委託の拡大は、まずはこうした一包化の定義を広げつつ、制度や法律面の整備と現場運用の両面から慎重に検討していく必要があるでしょう。

Q 外部委託を前向きに検討している薬局や、本コンソーシアムに参加している薬局は、どのような目的意識や共通点を持っているのでしょうか?

中﨑氏 参加の背景や立場はさまざまですが、共通しているのは、外部委託を単なる効率化ではなく、将来の薬局運営を見据えた仕組みとして捉えている点だと思います。

 例えば大手薬局チェーンでは、調剤業務を担う集約店舗を構想しているケースもあります。高価な機械を各店舗に設置しても、実際には稼働率がそれほど高くならないことも多く、設備を集約して効率的に活用したいというニーズが一定数あると感じています。

 また、調剤業務の一部外部委託はまだ特区に限定して認められていることから、本コンソーシアムとして具体的に取り組めている段階ではありませんが、調剤の外部委託は地域における医療提供体制の維持にもつながると考えています。 高齢者人口割合が高い過疎地域では、収益性の問題からも薬局や薬剤師の数が限られ、機械への投資も難しいという課題を抱える地域が少なくありません。こうした地域で1台の機械を共同で導入し、複数の薬局が協働・連携して活用する。そこに委受託の仕組みを運用することで、地域医療の維持・構築につながる可能性があります。

 さらに、これも構想の段階ではありますが、調剤の外部委託は、「24時間開局している薬局」を実現する仕組みの1つにもなり得ると考えています。受託薬局で行う一包化業務は、直ちに必要な薬剤は対象ではなく、数日後に患者さんの手元に届くものです。そのため、患者さんが来局しない夜間の時間帯に行っても問題のない業務と捉えることができます。地域の薬局としての通常業務に対応しながら、夜間の空いている時間に外部委託の業務を行う。こうした業務の整理ができれば、24時間開局という体制も、より現実的に構築できるのではないかと考えています。

対人業務へのモチベーションと環境作り、評価

Q DXや外部委託が導入され、対人業務へと現場の薬剤師が向き合う際、より能動的に対人業務に取り組むためには、どのような意識付けや意識の切り替えが必要になるでしょうか?

中﨑氏 まずは薬剤師という国家資格を取得した際の「何のために」という原点に立ち返ることが大切だと思います。目の前にいる患者さんを良くするために、自分の知識を使う。指示通りに調剤するだけでは、機械や非薬剤師スタッフでも代替できる状況になってきています。

 本コンソーシアム代表が運営するハザマ薬局では、対人業務の一環として、薬を持たずに患者さんと話すことを実践しています。薬の準備ができ、支払いの段階で薬剤師が話を聞こうとしても、患者さんは早く説明を終わらせてほしいという心理になりやすく、十分なコミュニケーションが取りづらいのが実情です。そこで、別のスタッフが調剤室で調剤をしている間に患者さんと話をする時間を設けています。そのタイミングで容態や服薬状況などを丁寧に聞き取ることで、より適切なアセスメントを行うことができ、より良い患者指導や医師へのフィードバックへとつながります。従前の業務フローや意識を切り替え、行動を変えていくことが重要だと感じています。

Q 今後の対人業務の評価軸はどのように変化していくとみていますか?

中﨑氏 DXが進展して、診療情報と薬局の調剤情報が連携されるようになると、最終的に「患者さんが良くなったのか」という結果に基づいて評価される可能性が高いのではと見ています。そこでは、単に服薬状況を確認するだけではなく、薬の効果や副作用をきちんと評価し、その情報を医師にフィードバックすることがより重要な業務になっていくでしょう。その過程で作成されるフィードバック文書など、情報提供の質そのものが評価対象になっていくことも考えられます。

Q 2026年度診療報酬改定に向けて動くなか、薬剤師の皆さんに向けてメッセージをお願いします。

中﨑氏 まずは対物業務を人に任せることが一番重要なことだと思います。特にいかに薬剤師の手から調剤の対物業務を切り離していくか。併せて患者ファーストへの思考の切替、すなわち患者さんの健康に寄与するために、薬剤師として何ができるかという視点で行動を変えていくことです。こうした動きは今後の診療報酬における評価にも合致していく方向性かと思います。

 いきなりすべてをDX化や、外部委託まで考えることは簡単ではありません。まずは、非薬剤師スタッフなどに任せられる業務を増やし、正確に指示を出すことに慣れるところから始めてみてはいかがでしょうか。その積み重ねが、薬剤師本来の役割である対人業務中心の形へと切り替える第一歩になると考えています。


中﨑 正太郎 氏
本職はシステムエンジニア。制御系から事務システムまで幅広く携わる。2014年よりハザマ薬局の業務改善に参画し、在宅業務の標準化、薬局パートナー制度、先服薬指導の企画・構築を推進。2020年に薬剤師からの指示を出すためのシジタスを開発。2023年より薬局DX推進コンソーシアム事務局長として、薬局間連携の電子化を推進。外部委託を見据え、委託薬局から受託薬局へ電子的に指示を出す仕組みも構築した。