
監修
日本大学医学部皮膚科学系皮膚科学分野
准教授
葉山 惟⼤ 氏
蕁麻疹は多くの人が経験し、Quality of Life(QoL)の低下に直結するにもかかわらず、短時間で消褪する特徴や症状の個人差などから、その影響が過小評価されやすい疾患です。一方で、近年は病態解明の進展を背景に新規治療薬が登場し、多くの患者さんが最終的に治癒へと至ることができるようになりました。しかしながら治療を中断してしまうケースも少なくなく、治療継続に向けては薬剤師による支援の役割が大きくなっています。そこで今回は、蕁麻疹を取り巻く環境や臨床上の課題を整理するとともに、2026年4月に改訂された蕁麻疹診療ガイドライン1)を踏まえ、治療戦略の概要、治療継続に向けた服薬支援の要点などについて、日本大学医学部皮膚科学系皮膚科学分野 准教授 葉山 惟大氏にご解説いただきました。
蕁麻疹症状によるQoLへの影響の甚大さ
社会的なインパクトも大きい
蕁麻疹の生涯罹患率は世界人口の約20%に達するとされ2)、非常に身近な疾患です。その一方で、日本のレセプトデータに基づく調査では有病率は1.2〜1.6%と報告されており3)、症状が短時間で消失することなどを背景に、病院を受診せずOTC薬の抗ヒスタミン薬(一部は蕁麻疹適応外)で対処している患者さんも多いと推測されます。
蕁麻疹は「命にかかわらない」「一過性のもの」と軽視されがちですが、患者さんの実際の苦痛は深刻です。蕁麻疹による労働生産性の低下は平均で約3割に及ぶとの調査結果もあり、これはアトピー性皮膚炎や乾癬と同等か、それ以上の社会的インパクトに相当します4)。
夜間を中心に強い痒みを伴う膨疹が発現
蕁麻疹は、なんらかの刺激によって真皮のマスト細胞が活性化され、脱顆粒によりヒスタミンなどの化学伝達物質が放出されることで生じる疾患です。強い痒みを伴う膨疹や紅斑が特徴で、一部の病型を除いては24時間以内に消褪します。
また、夜になると症状が悪化すると訴える蕁麻疹患者さんは多いのですが、これは決して気のせいではありません。蕁麻疹の原因となるマスト細胞にはサーカディアンリズム(体内時計)があり、夕方から夜間、午後6時〜午前2時ごろにかけては活性が高まる特性があるため、夜間に症状が現れやすいのです。夜間の痒みに伴う睡眠障害は日常生活への影響が大きく、学業や仕事で重大なミスを犯すといった社会的損失につながってしまうケースも少なくありません。一方で、日中にも蕁麻疹の症状が認められる場合は、マスト細胞が常時暴走している状態を意味するため、重症のサインとして捉える必要があります。
多くは特定の誘因がない特発性蕁麻疹
近年は病態解明も進む
蕁麻疹の原因はさまざまであり、日光や汗などの刺激、食物アレルギーなど直接的な原因が明らかなものがある一方、約7割は特定の外部刺激なく自発的に現れる特発性蕁麻疹です。特発性蕁麻疹は、発症後6週間以内に軽快する急性特発性蕁麻疹と、6週間を超えて持続する慢性特発性蕁麻疹に分けられます(表1)。
また、蕁麻疹の発症や悪化にかかわる背景因子として、特定抗原への感作による閾値低下のほか、アニサキスやCOVID-19などの感染症、ヒスタミン含有食物や仮性アレルゲンなどの食物、NSAIDsやACE阻害薬などの薬剤、自己免疫疾患などの基礎疾患が関与することも知られ(表2)、身近な例では花粉と特定の食品の交差反応なども挙げられます(表3)。ただし、はっきりと原因が分かるアレルギー性の蕁麻疹は1%もありません。
加えて、蕁麻疹の発症・悪化は疲労やストレスの影響も受けやすく、これは神経ペプチドを介したマスト細胞への直接刺激などが関与していると考えられています。特に出産・子育て・仕事の両立などストレス負荷の大きな20〜40代女性での発症が多い傾向があり、治療を進めるうえでは、生活の見直しやストレスマネジメントへの配慮も求められます。
なお、長く原因不明とされてきた慢性特発性蕁麻疹ですが、近年は病態解明が進み、発症には自己の皮膚成分(自己抗原)に対してIgEが反応して生じる「自己アレルギー」(TypeⅠ機序)や、抗IgE自己抗体などが関与する「自己免疫疾患に近い病態」(TypeⅡb機序)など複数の経路により惹起されることが明らかとなっています1)。
8年ぶりの蕁麻疹診療ガイドライン改訂
蕁麻疹の病態解明の進展や新薬の登場、また国際的な蕁麻疹治療ガイドライン改訂5)などの流れを受けて、2026年4月には8年ぶりに日本の蕁麻疹診療ガイドラインが改訂されました1)。今回の改訂では、病型分類の調整やマスト細胞の活性化経路に関する解説の追加、新薬を踏まえた治療アルゴリズムの変更などが行われています1)。また、Delphi法に従って推奨内容が評価されたことで、それぞれの推奨の強さが明確となり、実臨床においてより使いやすいガイドラインになりました1)。
治療方針の決定・評価に不可欠な
患者評価アウトカム尺度
蕁麻疹の多くは病院を受診する日中帯に症状が認められないことから、その治療方針の決定や評価においては、患者さんの自己評価がきわめて重要です。今回のガイドライン改訂では、治療導入の段階で新たに「重症度とコントロールを評価し、治療内容・目標・病態を患者と説明・共有する」というステップが明記されました1)。ここではベースラインの状態を蕁麻疹コントロールテスト(Urticaria Control Test;UCT)などの患者評価アウトカム尺度を用いて評価することが推奨されています1)。
UCTは実臨床でも広く用いられている蕁麻疹の患者評価指標です6)。以下の4つの質問から成り、各質問は0〜4点の5段階で評価し、合計点(0〜16点)でコントロール状態を判定します。0点は症状が非常に強い・全くコントロールされていない状態、4点は症状が全くない・完全にコントロールされている状態に対応しています。
①この4週間に、蕁麻疹による症状(痒み、膨疹、腫れ)がどのくらいありましたか。
②この4週間に、蕁麻疹によってあなたの生活の質はどのくらい損なわれましたか。
③この4週間に、蕁麻疹の治療があなたの症状を抑えるのに十分でなかったことがどのくらいありましたか。
④全体として、この4週間にあなたの蕁麻疹はどのくらい良い状態に保たれていましたか。
ガイドラインではUCTの点数を目安に治療目標が3段階で設けられており1)、第一目標は日常生活に支障がない状態(UCT12点以上)、第二目標は治療により症状が現れない状態(UCT16点)、そして最終目標は無治療で症状が現れない「治癒」の状態とされています(図1)。
治療は刺激誘発型か
特発性かにより大別される
蕁麻疹治療は、原因が「刺激誘発型」か「特発性」かによって方針が分かれます。刺激誘発型では原因物質や悪化因子の除去・回避が基本となりますが、特定の誘因がない特発性の蕁麻疹では抗ヒスタミン薬を中心とした継続的な薬物療法により病勢の沈静化を図ることが柱となります。最終目標は一部の病型を除いて治癒ですが、治癒に至るまでに4〜5年の治療を要するケースもあるため、治療内容や目標について医療者と患者さんが目線を合わせながら進めることが大切です。
薬物治療が中心となる慢性特発性蕁麻疹については、ガイドラインでは3つのStepによる治療強化が示されています1)。
● Step1:抗ヒスタミン薬
最初に非鎮静性第二世代抗ヒスタミン薬を連用します(通常量から開始し、適宜、他剤への変更・2倍量までの増量または2種類の併用)。重症例や若年者など薬物代謝が速いと考えられるケースでは、早期から2倍量で投与する場合もありますが、国際ガイドラインでは最大4倍量までの増量が推奨されており5)、過度な心配は必要ありません。なお、Step1の段階では、H2受容体拮抗薬・抗ロイコトリエン薬・トラネキサム酸を補助的治療薬として併用することも考慮できます。
● Step2:生物学的製剤の追加
Step1で十分なコントロールが得られない場合は、オマリズマブまたはデュピルマブを追加します。両剤はいずれもIgEにかかわる作用を有しますが、作用機序や適した患者背景が異なります(後述)。
● Step3:シクロスポリンなどの追加
Step2でコントロールが不十分な場合は、Step1にシクロスポリンまたは試行的治療の併用を検討します。
● 急性増悪時ステロイドの全身投与
急性増悪時には短期間のステロイド全身投与も選択肢となりますが、漫然とした投与を避けるために、ガイドラインではステロイドの使用は2週間以内にとどめること、効果的に症状が抑制できた場合は適宜減量して早期離脱を目指すことも明記されています1)。
蕁麻疹にステロイド外用薬は効かない
蕁麻疹を市販薬で対処しようとする患者さんのなかには、ステロイド外用薬を使用しているケースも散見されます。しかしながら、蕁麻疹の炎症は真皮の深層で生じているため、皮膚表面に塗る外用薬では有効成分が患部に届かず、病勢を抑えることはできません。蕁麻疹に対するステロイド外用薬の位置づけについては、ガイドラインでも「蕁麻疹ではステロイド外用薬の使用は避ける」という行動指針が明記されており1)、蕁麻疹に悩む患者さんがステロイド外用薬を不適切に使用しないよう、正しい知識を伝える必要があります。
ただし、例外的にステロイド外用薬が有効な場合もあります。たとえば、蕁麻疹に伴う痒みにより皮膚を激しく掻き壊して皮膚表面がザラザラと湿疹化している場合や、アトピー性皮膚炎を合併している場合などです。ただし、あくまでもその効果は蕁麻疹そのものではなく、掻破による二次変化に対して発揮されている点に注意が必要です。
生物学的製剤の作用機序と
蕁麻疹治療における使いどころ
今回のガイドライン改訂では、慢性特発性蕁麻疹治療のStep2としてオマリズマブとデュピルマブが推奨されました1)。両剤はいずれも生物学的製剤ですが、作用機序が異なることから、患者背景によって使いどころも変わります(表4)。
両剤の機序を説明する際、私は水道から水が出る様子を例えにしています。抗IgE抗体であるオマリズマブは、血中の遊離IgEを直接トラップし、マスト細胞上の高親和性IgE受容体(FcεRI)への結合を阻害します。水道(マスト細胞)の蛇口から出た水(IgE)をその場でキャッチするイメージで、効果発現が比較的速いという特徴がありますが、IgEがきわめて多いケースでは、十分な効果が得られないこともあります。
一方、デュピルマブは、従来からアトピー性皮膚炎や気管支喘息などの治療に用いられていた抗IL-4/13受容体抗体で、2024年に慢性特発性蕁麻疹への適応を取得しました。IL-4/13受容体の阻害によりIgE産生細胞の成熟が抑制されるなど、マスト細胞周囲の免疫環境を改善します。水道(マスト細胞)の元栓を閉めて水(IgE)が出るのを根本から抑えるイメージで、効果発現までにはやや時間を要するものの、気管支喘息やアトピー性皮膚炎などのTh2疾患を合併している患者さんを中心に良い選択肢となります。
バイオシミラーや新薬開発に伴い
治療選択肢はさらに増える見込み
近年はこれらの新規治療薬を適切に用いることで、重症の蕁麻疹患者さんであっても、多くが日常生活のパフォーマンスを落とさないレベルまで症状をコントロールできるようになりましたが、患者さんによっては薬剤費の高さが導入のハードルになることもありました。そうしたなか、2026年3月にはオマリズマブのバイオシミラーが日本でも製造販売承認を取得し、蕁麻疹治療の選択肢は増えつつあります。
また、慢性特発性蕁麻疹治療薬の開発は現在も進められており、すでに米国食品医薬品局(FDA)ではブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬のレミブルチニブが承認されています。マスト細胞内のBTK経路を阻害して脱顆粒を抑制する経口薬で、IgEが低いタイプの蕁麻疹にも効果が期待できることなどから、日本でも将来的な新規治療選択肢として注目されています。
治療継続を阻む自己中断
服薬の意義をどう伝えるか
慢性特発性蕁麻疹が治癒に至るまでには治療の継続が重要ですが、蕁麻疹の症状には波があるため、患者さんは症状が落ち着いたからとして自己判断で服薬を中断してしまうケースは少なくありません。蕁麻疹治療に関して理解が不十分なまま治療を始めると、薬剤を頓服として使用していたり、「3日飲んでも治らない」と早々に服薬を中断してしまったりすることもあります。
こうした自己中断を防ぐには、蕁麻疹治療の見通しや継続の意義を十分に伝えることが重要です。たとえば、降圧薬などを例に挙げ、「血圧を下げるために薬を飲み続けるのと同じように、体内にある蕁麻疹の“火種”を消し続けるために、症状がなくても服薬を続ける必要がある」など、患者さんが服薬を続けることの重要性を理解できるような説明が求められます。
併用薬のモニタリング
見逃しやすい薬剤性の悪化を防ぐ
蕁麻疹の治療効果が思うように発揮されない場合、そこには併用薬による症状の増悪が隠れているケースがあります。処方薬とOTC薬の両方を把握することのできる薬剤師の視点は、この問題を早期に発見するうえで大きな助けとなります。
たとえば、OTC薬にも多く含まれるNSAIDsは、アラキドン酸カスケードを介してマスト細胞を刺激し、蕁麻疹症状を増悪させることがあります。頭痛や生理痛に対して、たびたび市販の鎮痛薬を飲んでいる方は少なくありませんが、そうした方で蕁麻疹が発症している場合、症状悪化の原因がNSAIDsにあると気づかれないまま蕁麻疹の治療が長期化していることもあります。この場合、マスト細胞への影響が少ないCOX-2選択的阻害薬のセレコキシブへ切り替えることも1つの方法ですが、こちらは処方薬であるため、医師への情報提供など医薬連携が求められます。
アナフィラキシーを伴う蕁麻疹への
正しい対処法の指導
一部のアレルギー性蕁麻疹などアナフィラキシーのリスクが重なる患者さんに対しては、エピネフリン自己注射薬(エピペン®)が処方されます。しかしながら、「副作用が怖い」「本当に必要かどうか判断できない」という不安から、いざという場面で注射をためらう方も散見されます。エピペン®の注射後に生じる動悸や手の震えは一時的なアドレナリン効果に過ぎず、生命を脅かすものではありません。一方、アナフィラキシーを放置した場合には死亡することもあります。この点を患者さんやご家族、周囲の方にしっかり伝えることが重要です。
また、エピペン®は現在、自宅用と学校用の2本を処方可能であり、特に小児の場合は、患者さん本人・保護者・学校側の三者で正しい使用方法を共有しているかについても確認してください。加えて、エピペン®は一時的にアナフィラキシーを抑制する薬剤であるため、使用後は症状が軽快したとしても、すぐに119番通報して救急搬送するルールを徹底する必要があります。
生活指導では実践可能な小さな提案を
蕁麻疹に関する生活指導において気を付けたいのが過度な食事制限です。患者さんが何らかの食べ物が原因ではないかと考え、次々と食品を除去していくうちに、制限そのものがストレス源となり、かえって症状が悪化するケースも見られます。特に特発性蕁麻疹の場合は、特定の食物が原因となっていることは少ないため、過度に食品を除去することは栄養バランスの乱れやQoLの低下を招きます。
蕁麻疹患者さんへの生活指導では、たとえば花粉症を合併していれば、スギ花粉とトマトに交差反応があるという知見に基づいて、「トマトを食べて口腔内がひりひりするようになったら食べるのをやめるようにしましょうか」といったような、具体的かつ負担の少ない提案が望まれます。ストレスマネジメントについても同様で、「ストレスをなくしましょう」ではなく、「今の生活のなかで一つだけ、少し手を抜けることはありませんか」などと問いかけるアプローチが効果的です。
治癒を目指す時代のパートナーとして
薬剤師に期待すること
かつては症状を抑える治療が中心であった蕁麻疹ですが、治療の進歩により治癒を現実的な目標にすることができる時代となりました。蕁麻疹に悩む患者さんと接した際には「蕁麻疹は今、治せる時代になっていますよ」と伝え、ぜひ皮膚科やアレルギー科の受診を勧めてください。
また、日本には世界基準の蕁麻疹診療拠点として国際認定を受けた蕁麻疹国際診療センター(Urticaria Centers of Reference and Excellence:UCARE)が全国7カ所に設置されています(表5)。新薬の治験などを含む最新の治療を受けることも可能であることから、蕁麻疹治療に悩む患者さんには、こうした専門施設での治療も一つの選択肢として提案していただければと思います。
【参考文献】
1) 蕁麻疹診療ガイドライン策定委員会. 日皮会誌 2026; 136(4): 375-493.
2) Kolkhir P, et al. Nat Rev Dis Primers 2022; 8(1): 61.
3) Fukunaga A, et al. J Dermatol 2025; 52(12): 1775-1787.
4) Itakura A, et al. J Dermatol 2018; 45(8): 963-970.
5) Zuberbier T, et al. Allergy 2026 Feb 6.[Online ahead of print]
6) Weller K, et al. J Allergy Clin Immunol 2014; 133(5): 1365-1372, 1372.e1-6.
葉山 惟⼤ 氏
日本大学医学部皮膚科学系皮膚科学分野准教授。日本皮膚科学会専門医・指導医、日本アレルギー学会専門医。蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、化膿性汗腺炎など炎症性皮膚疾患を専門とし、臨床・研究・教育に従事している。蕁麻疹国際診療センター(UCARE)認定施設の診療にも携わり、難治性蕁麻疹の診療および新規治療の研究に取り組んでいる。





