特集の関節リウマチの解説はいかがでしたでしょうか。昔は不治の病と言われていた関節リウマチも、今では治療が進歩し寛解を目指せるようになりました。その一方で、患者さんの治療への満足度や不安についてはまだ検討の余地があるようです。その解決のカギとなるのは医療関係者とのコミュニケーションなのかもしれません。本記事では、関節リウマチや若年性特発性関節炎の患者さん向け資材を紹介します。
関節リウマチ患者に重要な要素とは
関節リウマチの診療では、特集記事で紹介したように「Treatto Targe(t T2T)」という概念が提唱されています。T2Tでは、関節リウマチの治療目標を患者さんと医師で共有し、そのときの症状や、炎症レベル、痛みの度合い、患者さんのQOLなどを総合的に鑑みて治療方針が適宜見直されることになります。
関節リウマチの患者さんやそのご家族にとって、関節リウマチについての知識と理解を深めること、また、医師をはじめとした医療関係者とコミュニケーションをうまくとることは、寛解や疾患活動を低い状態を維持するための重要なファクターと言えるのではないでしょうか。
関節炎関連の患者向け資材の活用
そこで今回、ファーマスタイル編集部では、製薬企業が作成している関節リウマチをはじめとした関節炎の患者さん向け資材に着目しました。調査してみると、個々の薬剤の用法・用量や副作用に関する理解促進のための「〇〇を服用される患者さんへ」といった服薬指導箋はもちろん、ほかにも実にたくさんの種類の資材が存在しています。
今回はその中から2つの資材を紹介します。このほか、高額療養費や介護保険などのサポート制度の解説や、関節リウマチの機能再建手術などの外科的な治療の紹介、自己注射ガイドなどさまざまな資材があります。ぜひご参考ください。
『もっと話そう関節リウマチ 症状や治療について』
ギリアド・サイエンシズ株式会社/エーザイ株式会社
資材タイトルにあるように、患者さんの負担や不安、要望を主治医に伝える重要性が訴求されて
います。
主治医と治療目標を話し合ったことがある関節リウマチ患者さんでは、話し合ったことや説明を受けたことがない患者さんに比べ、医療に満足している可能性が高い、といった患者調査が紹介されています。また、関節リウマチの患者さんは何に困っていて、どんなことを改善したいのか、患者さんの本音が伺える調査も紹介されており、人知れず悩んでいる患者さんの理解やサポートにピッタリです。
さらに、自覚症状の発現から長期寛解と改善まで、関節リウマチの患者さんが辿る道のりを、2ページの見開きでイラストを使って紹介されています。どんな流れで何をすることで寛解や改善を
目指すのか、患者さんが大まかなイメージを掴みやすい作りになっています。
『若年性特発性関節炎で治療を受けている患者さんへこどものリウマチ 治療のノート』
あゆみ製薬株式会社
本資材は、若年性特発性関節炎(JIA)の分類ごとの症状や治療薬、副作用が端的にまとめられています。患者さんの保護者とともに、小児患者さん本人にも理解してもらえるよう、すべての漢字にルビが振られています。
また、JIAでは関節リウマチ同様に疾患活動性の評価が重要です。本資材は、医療機関で測定した臨床検査値やDAS28、VASなどによる症状評価を、患者さんまたは保護者が記録する形式となっています。自ら記録することで患者さんや保護者が検査や治療効果を認識し、医師とのコミュニケーションも円滑になるものと思われます。
日常生活の動作の評価のチェックリストもあります。「新しいお菓子の袋が開けられますか?」や「自分の背より高いところにある重いもの(大きなゲーム、本など)に手を伸ばし、下におろせますか?」など、小児にとって身近な動作として記録できる使いやすい作りです。
そうだったのか! この1冊でスッキリわかる!
リウマチ・膠原病の薬物療法の考え方・選び方・使い方
監修:三村俊英
(埼玉医科大学病院リウマチ膠原病科診療部長)
著:和田琢
(埼玉医科大学病院リウマチ膠原病科)
発行:2021年06月
株式会社金芳堂
価格:4,400円(税込)
A5判・202頁
本書は医師向けの書籍ではありますが、薬剤師の学びになると考えられる内容と構成になっています。そのタイトルのとおり、「考え方・選び方・使い方」の書籍なので、医師の処方意図をつかむにはピッタリです。従来型抗リウマチ薬、生物学的抗リウマチ薬、JAK阻害薬といった関節リウマチの主要な治療薬について詳細かつ簡便に学習できます。
また、ステロイドについても、他の薬剤に変更するケースや、減量の目安など、日々の投薬を実施する上で医師がどのような時に何を考え処方しているのか、理解が促進される書籍です。
さらに、本書では、関節リウマチだけでなく、その他のリウマチ類縁疾患や一部膠原病まで含めたリウマチ膠原病の薬物療法に関する正しい知識(考え方・使い方)、そして疾患ごとの選択肢(メリット・デメリット)などがまとめられています。
リウマチ膠原病に対する誤った知識、偏見、誤解、苦手意識が払拭され、正しい道筋をつかむことができると思われます。