本誌6月号で、製薬企業に導入が進むチャットボットについて、薬剤師の利用実態について取り上げた。掲載後、多くの読者の皆様から反響をいただき、改めて新しい技術への期待をうかがわせる結果となった。そこで今号では、各企業が提供するチャットボットに個別にスポットライトを当て、それぞれの特長や、有効的な活用方法について、各企業の担当者の声を交えてご紹介しよう。

各社担当者に聞く、チャットボット導入の真意

 読者アンケートでは、「急ぎの質問は電話で」という回答が多く、製薬会社への問い合わせ方法の主流は、現在も電話ということが浮き彫りとなった。
 しかし一方で、「まずはネットで検索」という流れも次第に増えてきていると製薬会社の担当者は答えた。電話での質問、Webサイトに公開された情報の検索、MRへの問い合わせなど、多様化する問い合わせ導線に、新たな道筋を用意したいというのが、チャットボット導入の真意なのだ。さらに、ある担当者は「電話での質問をご遠慮されている方もチャットボットなら、時間を気にせず、いつでも気軽にお問い合わせいただけると期待しています」とも語った。

よくある質問は、チャットボットにおまかせ

 添付文書を読んで解決することもあれば、緊急性の高い情報は、製薬会社のWebサイトでトップページに直接情報へのリンクが用意されていることもあるだろう。そうした「答え」への道筋の一つとして、チャットボットを利用して欲しいと製薬会社の担当者は語る。
 薬剤の分割や一包化などのように、多くの方から同様の質問が寄せられることがあるという。それらをFAQ(よくある質問)としてまとめてWebサイトで公開している製薬会社も少なくない。こうしたよくある質問への回答の方法として、単語や文章で検索できるチャットボットは有効だという。各社のチャットボットの特長を知り、是非とも上手に活用していただきたい。


サービス内容
〇アストラゼネカ製品FAQ
〇使用期限確認
〇現行品確認
〇資材請求
〇MR連絡

アズトリート担当者からのサービス紹介
 アズトリートは医療従事者様が当社の正しい製品情報をご都合のよいタイミングでご確認いただけることを目指してサービスを開始いたしました。会話感覚でお問い合わせいただけるよう、チャット形式で対応するサービスです。 アズトリートは当社製品に関するFAQ、使用期限、現行品であるかの確認、資材請求、MR連絡を行うことができます。FAQサービスはご質問をテキスト入力することで、FAQの候補が表示されます(図1)。FAQは普段、医療従事者様から当社コールセンターに多く寄せられるお問い合わせから作成されています。また、適切なFAQがヒットするよう、検索精度を高める工夫がされています。
 さらに、アズトリートは資材請求を行うことができます※。ご要望される資材の番号または資材名で検索いただき、送付先等をご入力いただきますと、ご施設に資材を送付いたします。ぜひご活用ください(図2)。
※資材請求とMR連絡はアストラゼネカ医療従事者様向け会員サイト「MediChannel」への会員登録した会員様が対象となります。

図1:アストラゼネカ製品FAQの使用方法
「アストラゼネカ製品FAQ(よくあるご質問)」を選択する。製品名を特定し、質問内容をテキスト入力するとFAQ候補が表示されるため、該当するFAQを選択することで回答が表示される。

図2:資材請求方法
「資材請求」を選択する。資材番号、または資材名を入力、選択すると資材候補が表示されるため、該当する資材を選択し、送付先等を入力して依頼。


サービス内容
〇協和キリン社製品(剤形別)のFAQへの回答
〇LINEの友だち登録で、LINE上からチャットボットにお問い合わせ

チャットボット担当者からのサービス紹介
 医療関係の先生方は、患者さんに休みはなく24時間365日応対されています。弊社では電話での応対が難しい休日、また電話するのが手間であったり、電話せずに短時間で弊社製品の適正使用情報を確認したい医療関係者の先生方がいつでも気軽にお問い合わせできることを目指してチャットボットを開始しました。
 弊社のチャットボットでは、お問い合わせ回答をより効率的に見つけていただくために、製品名を選択いただくと予測機能(代表的なお問い合わせ)を活用した効率的な情報取得ができます。また、お問い合わせいただいた内容への回答は文章とリンク先の表示だけでなく、図表での説明が可能な回答はチャットボット上で図表・データを含めた情報を表示し(図1)、同一画面上で確認いただけます。
 なお、弊社医療関係者向けの協和キリンメディカルサイトだけでなく、スマートフォン(LINE)からもアクセスいただけます。またお問い合わせに対して回答できなかった場合は、スマートフォンより直接リンクでくすり相談窓口へ連絡いただくことも可能です。医療関係者の先生方が短時間で手間なく適正使用に繋がる情報が入手できるようお使いいただけると幸いです。

図1:チャットボットアクセス例
チャットボットにアクセスし、問い合わせたい製品を選択すると、当該製品に関する代表的な質問が表示され目的の質問を選択することで回答が表示される。また画面下で知りたい
キーワードを入力すれば関連する質問が表示される。回答では図表・データを含めた情報を同一画面上で確認できる。

図2:LINEからのアクセス
L I N E で「協和キリン医薬品情報(Q&A)」に友だち登録後、トーク画面下部に表示されている「チャットボット窓口はこちら」をタップすると直接お問い合わせができる。


サービス内容
〇日本イーライリリー製品に関する主要な質問に回答
〇顧客の希望に応じて、チャットボットからコールセンター担当者に円滑に連携、問合わせに対応できる

リリーメディカル チャットボットサービス担当者からのサービス紹介
 リリーメディカルの役割は、価値あるメディカルソリューションの提供を通じて患者さんの治療アウトカムの向上に貢献することです。そのために、コールセンターやWebサイトなどの多様なチャネルで医療従事者の皆様に情報提供が行える体制を構築しています。こうした多様なチャネルの一つとして、2021年3月にリリーメディカル チャットボットサービスの提供を開始いたしました。
 リリーメディカル チャットボットサービスは独自のAIアルゴリズムにより、Webサイト内でのキーワード検索に比べてより迅速に的確な回答をご提供します。また2022年6月からはチャットボットが直接回答できないような質問について、ご希望があれば同じチャットボット内からコールセンター担当者に質問をすることができるサービスを提供しています。よくある質問についてはチャットボットより即時回答を提供し、チャットボットで回答ができない場合は人が対応するという、チャットボットとコールセンターのハイブリット活用によってより速やかな顧客対応を可能としています。多様なチャネルの特性を生かした情報提供が患者さんの治療アウトカムの向上につながると期待しています。

図1:チャットボットからコールセンター担当者に連係
チャットボットで回答が得られない場合、チャットボットは担当者との直接のチャットを希望するかを確認し、希望する場合は、シームレスに担当者とチャットを続けることができる。