初の5種混合ワクチンとメリット
厚生科学審議会の予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会ワクチン評価に関する小委員会(以下、小委員会)は、2023年8月29日、5種混合ワクチンを定期接種に位置付ける方針を了承した。
5種混合ワクチンとは、定期接種となっている百日せき、ジフテリア、破傷風、ポリオ、ヘモフィルスインフルエンザ菌b型(Hib)の5種の感染症を予防するワクチンで、5種混合は田辺三菱製薬と阪大微生物病研究会が2023年3月に初めて製造販売承認を取得した(KMバイオロジクス社は承認申請中)。これらの感染症に対する現行の定期接種は、4種混合ワクチンとHibワクチンの2種類のワクチン接種となっている。5種混合にすることで接種回数を減らし、乳幼児や保護者の負担を軽減するほか、効率的な接種による早期免疫の獲得や接種漏れの回避といったメリットが挙げられる。
定期接種化に向けた既存品目との比較
既に定期接種となっている疾患に対して、新たにワクチンが薬事承認された場合には、その都度、「有効性」・「安全性」・「費用対効果」の観点で検討・評価が行われる。5種混合ワクチンは、現行の2種類のワクチン接種と比較して、有効性・安全性は同等とされた。接種に関わる費用[ワクチン単価+接種費用(技術料)]は、4種混合ワクチンとHibワクチンをそれぞれ接種する際の総額より、5種混合ワクチンの方が下がると見込まれている。今後、4種混合ワクチン+Hibワクチンの接種、あるいは5種混合ワクチン接種の2通りの接種方法が平行し、5種混合ワクチンへと切り替えが進むと予想される。
4種混合と5種混合の混在時期の課題
5種混合ワクチンに切り替わることで、従来の4種混合ワクチンとの交互接種(最初のワクチン接種と異なるワクチンで追加接種を受ける方法)や接種時期の差異などが懸念される。小委員会では、以下の方針で検討を進めるとした。
1)交互接種の可否:同一の疾病に対して複数種のワクチンが利用でき、複数回接種する際は、原則過去に接種歴のあるワクチンと同一のワクチンを用いる。ただし、転居先の状況等で難しい場合は、交互接種も可能という規定を設ける。
2)接種終期:4種混合ワクチンの終期は生後90か月(7歳6か月)、Hibワクチンは生後60か月(5歳)とずれがあるが、5種混合ワクチンの終期は遅い方に合わせ、90か月とする。
3)標準的な接種期間:Hib感染症の発症が5歳時点までに多い点を鑑みて、標準的な接種期間は現行と同様とする(ゴービックの添付文書では「初回免疫は、標準として生後2か月から7か月未満で開始し20~56日の間隔をおいて接種。追加免疫は、標準として初回免疫終了後6か月から13か月を経過した者に接種」)。
4)接種開始時期が遅延した場合の対応:基本的に5種混合ワクチンを接種する。
【参考情報】
・厚生労働省:第20回予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会ワクチン評価に関する小委員会各種資料
・ゴービック水性懸濁注シリンジ添付文書
※本記事は2023年9月26日時点の情報で作成しています。今後の検討状況により、添付文書や方針等が変わることもありますので、最新の情報をご確認ください。