2024年9月号では、長期収載品に関する選定療養の基本的な仕組みを中心に取り上げました。今号もYou Tubeチャンネル「薬局のアンテナ」(2024年10月1日時点チャンネル登録者数;10,030名)運営者てっちゃん氏に、2024年8月以降に公開された疑義解釈なども踏まえ、よくある疑問点を整理し、具体的な対応策などを伺いました。

監修:You Tubeチャンネル「薬局のアンテナ」運営者
てっちゃん 氏


仕組みのおさらい(概要まとめ)

 改めて、長期収載品に関する選定療養の概要を示します(図)。選定療養とは、大まかにいえば、「医療保険と自費を組み合わせてもよい」制度といえますが、今回の長期収載品への選定療養費制度の導入により、「2024年10月以降に患者さんが後発医薬品のある先発医薬品(長期収載品)を希望する場合は、先発医薬品と、薬価が最も高い後発医薬品との差額の1/4は保険外、つまり自費になる」と押さえておきましょう。

 私見にはなりますが、どちらも要件を満たさないと考えます。当加算は、「保険薬剤師が患者に重点的な服薬指導が必要と認め、必要な説明及び指導を行ったときに算定する点数」であり、通常の指導に加えてより丁寧な説明が必要となる場合を評価する、という位置づけですので、更に踏み込んだ説明が求められると考えています。

 具体的には、患者さんに選定療養の対象薬剤が初めて処方され、基本的な先発医薬品/後発医薬品の使用に関する意向を把握し、当該患者さんが先発医薬品を希望した場合に、選定療養の概要選定療養の対象薬剤自己負担金額の変化などの説明が必要かと思います。

 医療保険に加入かつ、国の公費負担医療制度により、一部負担金が助成されている患者さんが長期収載品を希望した場合は、選定療養の対象となります(参考)。こども医療費助成等の地方単独の公費負担医療についても同様に対象です(2024年7月12日事務連絡 疑義解釈参照)。今回の長期収載品の選定療養では、医療上の必要性や、医療機関や保険薬局等で在庫状況等により後発医薬品が提供できないといった事由以外で、対象外を設けていない点は留意しておきましょう。

 しばしば「生活保護の受給者にも、選定療養費制度が適用されるのか」とご質問を受けることがあります。この点を考えるにあたり、前提として、選定療養は医療保険制度のなかの1つの仕組みであり、医療保険に加入している方を対象にしている点は押さえておきましょう。生活保護の受給者の多くは、医療保険に加入していないケースが多いと思います。そのため、選定療養の仕組みの対象外となります。これも踏まえ、生活保護受給者への薬剤処方の原則を振り返ります。

 生活保護は、医療保険ではなく医療扶助、すなわち原則、医療サービスそのものを現物支給するという考え方に基づきます。さらに生活保護法において、生活保護受給者への医療扶助については、「医師又は歯科医師が医学的知見に基づいて後発医薬品を使用することができると認められた場合は、原則として後発医薬品を給付」とされています。

 この原則に基づき、2024年8月21日に公開された疑義解釈(その2)の問7では「生活保護の受給者である患者が、医療上必要があると認められないにもかかわらず、単にその嗜好から長期収載品の処方等又は調剤を希望する場合は、当該長期収載品は医療扶助の支給対象とならない」と示されました。つまり、生活保護を受給する患者さんについては、医療扶助は原則、後発医薬品で給付されることになります。長期収載品が処方・調剤されるのは、あくまでも医療上の必要性がある場合に限られています。

 疑義解釈(その2)の問8に示されていますが、先述もした通り生活保護を受給する患者さんには後発医薬品の使用が原則となり、長期収載品の処方や調剤はできません。つまり、「特別な料金」を徴収して長期収載品を提供するケースは生じない(特別な料金を徴収することで、長期収載品を提供することはできない)ということになります。

 疑義解釈(その2)の問8の注目点は、生活保護と医療保険(社会保険など)を併用している患者さんについても示唆している点です。問8の(答)には「長期収載品を医療扶助または保険給付の支給対象として処方または調剤することはできない」とあります。医療保険に加入していても生活保護を受給している場合は、医療上の必要性があると認められず、保険薬局等で問題なく後発医薬品を提供できる際には、長期収載品を処方や調剤、すなわち特別な料金を徴収して提供することはできない、と考えることができます。


 もともと後発医薬品使用の原則に基づき、生活保護を受給する患者さんに対し、患者希望による長期収載品の調剤は、一部例外を除いて認められていません。そのため、長期収載品に対し選定療養費制度が導入されたからといって、「後発医薬品使用の原則」は従前どおりであり、今回の制度導入のために何かしなくてはいけないということではない、という点は念頭にいれておきましょう。ただし、患者さんの強い希望などさまざまな要因により、長期収載品を提供しているケースが少なからずあるのも事実でしょう。そのようなケースに対し、薬局として今後どのような対応を選択していくかが重要だと思います。

 まず、すでに処方されている長期収載品について。今回の長期収載品に対する選定療養費制度導入にあたり、改めて当該患者さんに後発医薬品への理解と切り替えを促進し、長期収載品から後発医薬品に変更してもらうことも1つの方法です。切り替えが難しいとなった場合は、処方されている長期収載品について、改めて処方医に医療上の必要性の是非を確認する。あるいは薬剤師が剤形上の問題点から、医療上の必要性に応じて長期収載品の処方を判断するといった対応を取ることも1つでしょう。医療上の必要性が認められれば、継続して提供することは可能となります。

 一方で、生活保護を受給する新規の患者さんや、そうした患者さんに対する新規の処方については、後発品使用の原則に基づき、どのような対応を取るかは薬局として決めておいたほうがよいと思います。



てっちゃん 氏 プロフィール

「薬局のアンテナ」の名称でYouTubeチャンネルとLINE公式アカウントを運営し、①薬局・薬剤師が守るべき【法律】、②薬局収支や薬剤師職能に関わる【調剤報酬】、③薬局現場での効率的な【薬局運営】を主なテーマに、薬局に関わる全ての方に役立つ情報を発信している。(「薬局のアンテナ」URL;https://www.youtube.com/@Pharmacy_Channel