ループス腎炎とは
ループス腎炎は、難病のひとつである自己免疫疾患の全身性エリテマトーデス(Systemic Lupus Erythematous;SLE)に伴って発症する、糸球体腎炎。“lupus(ループス)”はラテン語で「狼」。SLEでは頬に蝶のような形の発疹が発現し、これが狼が噛み跡に似ていることに由来するとされる。
日本におけるSLE患者は約6万~10万人とされ、その約半数がループス腎炎を発症する。特に20~40歳代の女性に多く見られ、男女比は1:9で女性の割合が高い。
ループス腎炎の症状と検査
ループス腎炎の主な症状は発熱と皮疹。また、腎臓が影響を受けることで尿中に異常が現れることも多く、タンパク尿や血尿が見られることがある。腎機能がさらに低下すると、ネフローゼ症候群として浮腫、高血圧などの症状が現れ、生命予後の重要な決定因子となる。
ループス腎炎は主に尿検査や血液検査で診断する。尿検査でタンパク尿や血尿の有無を確認し、血液検査では腎機能を評価する。また、確定診断のために、腎臓の組織を直接採取し、顕微鏡下で炎症の状態や病変を観察する腎生検という手段をとることもある。もっとも、ループス腎炎による予後への影響から、SLEが診断された時点で定期的な腎機能検査を実施し、ループス腎炎の発症予防や早期発見することが重要視されている。
ループス腎炎の治療
ループス腎炎は、寛解導入期と寛解維持期に分けて治療される。
寛解導入期には、プレドニゾロン±メチルプレドニゾロンパルス療法に、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)またはシクロホスファミドが推奨されており、状況に応じ免疫抑制薬も併用される。病型によってタクロリムスの投与が考慮されることもある。
導入療法で腎臓の反応が適切に得られた後は、寛解維持療法として、免疫抑制療法を少なくとも2年間継続する。寛解維持療法では,必要最小限のステロイドに加え、MMFまたはアザチオプリン、タクロリムスの投与が推奨されている。このほか、膜性ループス腎炎という分類の患者に対しては、カルシニューリン阻害薬の投与が考慮される。2024年9月24日に承認された「ルプキネスカプセル7.9mg(一般名:ボクロスポリン)」はここに位置する。さらに、心血管の合併症が多いために、降圧、脂質低下、抗血栓療法など補助的に実施することがある。
【参考情報】
・大塚製薬株式会社2024年9月24日ニュースリリース
・慶応義塾大学病院医療・健康情報サイト
・旭化成ファーマ株式会社HP「全身性エリテマトーデス(SLE)とは」
・小児慢性特定疾病情報センターHP「ループス腎炎」
・全身性エリテマトーデス診療ガイドライン2019
・MSDマニュアルプロフェッショナル版「ループス腎炎」