日本の冬の風景といえば、こたつにみかん。読者のみなさんは、この冬、みかんをいくつ食べましたか?今回は、わたしたち日本人になじみ深い果物であるみかん(温州みかん)について調べてみました。
みかんはビタミンC が豊富なことはご存じの方も多いでしょう。それゆえ、肌荒れや風邪予防に効果的といわれています。果肉の袋の部分には、便秘改善の作用があるペクチン、さらに袋や白い筋には動脈硬化や高血圧の予防効果を期待できるヘスペリジンを含んでいます。色素成分のβ-クリプトキサンチンは、がん予防の可能性や糖尿病、骨粗鬆症などのリスクを下げるという報告もあり、三ヶ日みかんなど一部の商品は、骨の健康に役立つとして機能性表示食品に登録されています。
東洋医学の観点から見ると、みかんには胃をしっかり動かして食欲を回復させる働きがあるそうです。温州みかんの成熟した皮は、「陳皮」と呼ばれ、健胃・鎮静・鎮嘔・去痰作用を期待して漢方に配合されます。生薬製剤としては、消化不良や胃炎、吐き気、シャックリに対して用いられ、民間薬としては浴剤や健胃薬としてお茶に用いられています。また、みかんは気分を落ち着かせて潤いも補うといわれています。口が乾く、気分が沈みがち、などの症状がある方にもおすすめです。
また、薬剤師としては気になる柑橘類ですが、温州みかんからはフラノクマリン類が検出されなかったという調査がありました。温州みかんによる降圧薬の薬効増大の心配は無さそうです。
芥川龍之介の短編小説に「蜜柑」という作品があります。その小説では、走る汽車の窓から子供たちに向けて投げ落とされる蜜柑が夕日に染まり、その蜜柑の美しさと、蜜柑を投げた少女の優しさに主人公は心を動かされます。見て良し、食べて良し、薬にも良し。もうすぐ春ですが、まだまだみかんを楽しんでいきましょう。