私たちは色に対して、好き、美しい、落ち着くといった情緒的な印象や、暖かい、冷たい、近いなどの知覚的な印象を抱きます。今回は色が及ぼす効果について紹介します。
色が体内に及ぼす影響について調べたある実験では、赤一色の部屋と青一色の部屋が用意され、そこに被験者が一定時間滞在しました。この2つの部屋の温度や湿度はまったく同じに設定されたにもかかわらず、脈拍や呼吸数、血圧などのバイタルサインが、赤一色より青一色の部屋で低いという結果が得られました。特筆すべきは、目隠ししてこの2つの部屋に入っても、バイタルサインが同じような反応を示したことです。
これには、波長が関係していると考えられます。赤は赤外線の隣に位置する波長が大きい色、青は紫外線寄りに位置する波長が小さい色です。赤は筋肉の興奮効果、青は筋肉の弛緩効果があるいわれています。つまり、目で見ずとも、色の波長を皮膚で感じ取った結果、バイタルサインがその影響を受けたという風に考えられるのです。
刑務所の壁を淡いピンクにしたところ、囚人が大人しくなったという話もあります。アメリカの大統領選挙は服装の色を戦略的に使っていることで有名ですね。リモートワークが広がる現在、スマホやPCで今の気分を表す色を選び、コミュニケーションやメンバーの状態把握に役立つようなサービスシステムも開発されています。
色から受ける印象は、文化や宗教、各個人の色の体験といった背景にも影響を受けるので一概にはいえませんが、いくつか色を使う際の効果的なシチュエーションを紹介します。こうした際には、ファッションやインテリアに少し取り入れてみてはいかがでしょうか。
参考資料
佐々木 仁美(監修)『色の心理学 心も身体も左右するのは色のチカラでした 本当の自分がわかる!人生が愉しくなる』枻出版社 2014年
山脇 惠子『色彩心理のすべてがわかる本』ナツメ社 2010年
朝日新聞デジタル記事「同僚の気分は何色? 見えるシステム開発 日本特殊陶業」(2020年8月4日)