花は青でもコガネバナ
江戸期に朝鮮から渡来

コガネバナは東シベリア、モンゴル、中国北東・北西部などの涼しい草地で育ちます。草丈は30~60cm。7~9月頃にかけて青紫色の細長い唇形花を咲かせます。茎は四角、葉は針形で対生し、その見た目からシソ科の植物だと分かります。花は青紫色なのにコガネバナという名前を不思議に思う人がいるかもしれませんが、根の断面が黄色いことからその名がつけられました。徳川幕府の八代将軍吉宗が小石川療養所(現小石川植物園)を開設した享保年間(1716-1736年)に朝鮮から種を取り寄せたという記録が残っています。徳川吉宗は生薬の国産化を進めた人です。

黄色い生薬グループ
味は苦く性味は「寒」

皮を剥(む)いた乾燥根は生薬の「黄 芩(おうごん)」として用います。黄色い生薬の仲間を思い出してください。黄連(おうれん) 、黄柏(おうばく)、山梔子(さんしし)、大黄(だいおう)、どれも苦くて個性的です。
黄芩は、オウゴニンやバイカレインなどのフラボノイドを含み、利胆、抗アレルギー、鎮静作用などが知られています。単味で用いることはありません。黄色い生薬には共通性が見られ、みな味が苦く、漢方で薬効の性質を表す性味は「寒」です。生薬の色と漢方での作用が類似していることはとても不思議です。
黄芩は組み合わせる生薬によって色々な作用特性を発揮します。その中の代表的な2つの配合処方をご紹介しましょう。

黄連解毒湯(おうれんげどくとう)
黄連、黄芩、黄柏、山梔子の4味。黄芩と黄連の組み合わせで清熱鎮静作用を強く発揮し、興奮状態による精神不安、のぼせ、不眠、高血圧に伴う頭重感、更年期障害、二日酔などに良い。

小柴胡湯(しょうさいことう)
柴胡(さいこ)、半夏(はんげ)、生姜(しょうきょう) 、黄芩、人参、大棗(だいそう)、甘草の7味。黄芩と柴胡の組み合わせで清熱作用を強く発揮し、胃腸虚弱や風邪の後期の諸症状に使われる。
なお、小柴胡湯の副作用の間質性肺炎は黄芩の関与が疑われていますが、明らかではありません。生薬の不思議な組み合わせ、奥が深いですね。