
今回は、2025年1月29日に開催された中央社会保険医療協議会総会の資料をもとに、2025年4月から変わる調剤報酬に注目。「医療DX加算の見直し」および「特定薬剤管理指導加算」の変更点とポイントをYouTubeチャンネル「薬局のアンテナ」(2025年2月20日時点チャンネル登録者数;11,473名)運営者てっちゃん氏に解説いただいた。
監修:YouTubeチャンネル「薬局のアンテナ」運営者
てっちゃん 氏
※本記事は2025年2月26日時点の情報で作成しております。今後の動向により、解釈が変わることもございますのでご留意ください。

点数とマイナ保険証利用率がそれぞれアップ
医療DX推進体制整備加算(医療DX加算)は、オンライン資格確認で取得した情報の活用や、電子処方箋の普及、電子カルテ情報共有サービスの導入などを通し、より質の高い医療を提供するために医療DXに対応する体制を確保していることを評価する項目です。2024年度診療報酬改定で新設されて以降、マイナ保険証利用率に応じて算定区分が3つに分けられたり(2024年10月~)、オンライン資格確認ベースとレセプト件数ベースから選択可能だったマイナ保険証利用率が「レセプト件数ベースのみ」になったりと(2025年2月~)、しばしば変更が行われてきました。
2025年4月以降の変更点を整理するため、各算定区分の点数とマイナ保険証の利用率を表1にまとめました。医療DX推進体制整備加算は、マイナ保険証利用率に応じて1~3の区分に分かれていますが、2025年4~9月までの医療DX推進体制整備加算1の点数は、10点にアップしました。ただし、施設基準として求められるマイナ保険証利用率も45%以上とアップしています。同様に加算2は8点、加算3は6点、とそれぞれ点数は上がったものの、マイナ保険証の利用率も加算2は30%以上~45%未満、加算3は15%以上~30%未満、に上がりました。要するに「点数は上がったが、ハードルも上がった」といえるでしょう。また、マイナ保険証の利用率が10%以上~15%未満の薬局については、今までは4点を算定できていましたが、2025年4月以降は算定できなくなりますので、注意が必要です。

マイナ保険証の利用率は、適用月の3月前のレセプト件数ベースマイナ保険証利用率を用いることが原則とされていますが、前月(4月前)および前々月(5月前)の利用率を用いることも可能です。当該参照できる3月間のなかで最高値の利用率が適用されることになります。表2は、2025年4月以降の各算定月に応じたマイナ保険証利用率実績の参照期間をまとめたものです。
例のとおり、マイナ保険証利用率の考え方を振り返りましょう。マイナ保険証の利用率は毎月変動します。すでに医療DX加算の届出をおこなっている場合で、マイナ保険証利用率の実績による施設基準に応じて区分変更になる場合、当該区分変更に関する届出は不要とされています。
【例】 2025年4月および5月適用分のマイナ保険証利用率の考え方
●2025年4月適用分
2025年4月を起点とし、2025年4月の「3月前」は2025年1月であり、「その前月(4月前)および前々月(5月前)」は2024年12月および11月。2024年11月~2025年1月の3月間のなかで、レセプト件数ベースのマイナ保険証利用率の最高値が2024年12月の25%だった場合、2025年4月以降の施設基準と照らし合わせ、マイナ保険証利用率「15%以上~30%未満」の「加算3」(6点)に該当する、と判定できる。
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●2025年5月適用分
2025年5月を起点とすると、「適用月の3~5月前」は2024年12月~2025年2月。2025年2月のマイナ保険証利用率が35%で、最高値だった場合、マイナ保険証利用率「30%以上~45%未満」の「加算2」(8点)に該当する、と判定できる。4月→5月で「加算3」→「加算2」となるが、この際、マイナ保険証利用率の施設基準に関する届出直しは不要。
電子処方箋は調剤結果の登録が要件に
今後はチェックリストの点検要に
医療DX推進体制整備加算は、2025年3月31日までの経過措置として「電子処方箋により調剤する体制を有していること」が施設基準の1つに挙げられていました。4月以降は「電子処方箋を受け付け、当該電子処方箋により調剤する体制を有するとともに、紙の処方箋を受け付け、調剤をした場合を含めて、原則として、全てにつき調剤結果を速やかに電子処方箋管理サービスに登録すること」となります。電子処方箋による調剤体制を有するだけではなく、すべての調剤結果を速やかに電子処方箋管理サービスに登録する必要がある、という点を押さえておきましょう。また、電子処方箋の導入については、「厚生労働省が示すチェックリスト※を用いた点検が完了した医療機関・薬局を『電子処方箋導入済み』として取り扱う」との方針が示されています。電子処方箋を導入するだけではなく、チェックリストを用いた点検までが必要である、という点も留意しておきましょう。
※ 厚生労働省HP掲載「電子処方箋の運用に関するチェックリスト(薬局向け)」
今後の届出はどうなるか
今後、疑義解釈通知等で規定される事項のなかで、「届出」に関する内容は、私にも問い合わせが多く、特に関心が高いように感じています。いずれの項目も詳細に関しては続報を確認する必要がありますが、保険薬局に関係する項目について、すでに医療DX加算を届け出ている場合と、届け出ていない場合に分け、一部ご紹介します。
1)2025年3月31日までに医療DX加算を届け出ていない保険医療機関・薬局
●2025年4月以降に医療DX推進体制整備加算を算定する場合は、新たな様式で施設基準の届出が必要になる(新たな様式については、今後、通知等で詳細が示される予定)。
2)2025年3月31日時点で、すでに医療DX加算の施設基準を届け出ている保険医療機関・薬局
●2025年4月以降、マイナ保険証利用率の要件が基準に満たない場合、つまり「いままで算定していたが、算定しなくなる」場合の届出直し、また辞退届出は不要。ただし、加算の算定はできない。
●「『加算3』のマイナ保険証利用率要件については、2025年4月1日~9月30日までの間に限り、『●%』とあるのを『●%』とする場合には、新たな様式で施設基準の届出が必要」とされている(「中医協総-6-2 7.1.29」参照)。この点については、基準や対応含めて不透明のため、続報を要確認。
●2025年3月31日時点で、電子処方箋未導入の保険薬局については辞退届出が必要。

薬局の業務負担等を背景に、点数の見直し
特定薬剤管理指導加算3-ロは、2024年10月から導入された長期収載品の選定療養や、長引く医薬品供給不安定に対する患者対応に薬局の業務負担が増加していることを踏まえ、評価の見直しが行われました。現状5点となっておりますが、見直し案では10点、つまり+5点に倍増する見込みです。
当改定により、「特定薬剤管理指導加算3-イは5点のまま、3-ロが10点に変更」となりますので、薬局内の皆様で共有しておくべき点かと思います。
特定薬剤管理指導加算3‒ロ:(現行)5点 →(見直し案)10点
※服薬管理指導料の加算であり、かかりつけ薬剤師指導料における同加算についても同様の見直しが行われる予定。
[特定薬剤管理指導加算3‒ロ]
「服薬管理指導料」と「かかりつけ薬剤師指導料」にかかるものであり、特に丁寧な説明が必要となる薬剤が処方されている患者への適切な指導を評価する(患者1人につき当該医薬品に関して最初に処方された1回に限り算定)。以下のいずれかのケースについて、調剤前に指導・説明した場合に算定可
1)長期収載品に関する選定療養の説明
2)医薬品供給不安定を理由に、前回と異なる銘柄で調剤・交付する必要があることを説明及び指導
てっちゃん 氏 プロフィール
「薬局のアンテナ」の名称でYouTubeチャンネルとLINE公式アカウントを運営し、①薬局・薬剤師が守るべき【法律】、②薬局収支や薬剤師職能に関わる【調剤報酬】、③薬局現場での効率的な【薬局運営】を主なテーマに、薬局に関わる全ての方に役立つ情報を発信している。(「薬局のアンテナ」URL;https://www.youtube.com/@Pharmacy_Channel)
