2026年度は通常の薬価改定に加え、抜本的な薬価制度改革が実施される節目の年。厚生労働省による制度設計が進められていますが、近年は医薬品の供給不安への対応が常態化しており、薬局現場では制度変更への対応と日常業務の両立が求められる状況にあります。本稿では、薬剤師業務にも影響しうる2026年度制度改革のポイントを実務の視点から整理します。


薬価改定の基礎知識 「G1」ルールとは

 薬価改定は本来、診療報酬改定と同時に2年に1度行うことを基本としてきました。しかし近年は、診療報酬改定のない年にも「中間年改定」が実施されており、結果として、市場実勢価格を踏まえた薬価の見直しが毎年行われています。

 こうしたなか、長期収載品に依存するビジネスモデルからの転換を図り、革新的医薬品の創出促進と後発医薬品市場の競争強化を目的として、2018年度薬価改定で導入されたのが、G1・G2・Z等のルールです。これらに基づき、長期収載品は後発医薬品の上市後、一定期間ごとに段階的な薬価引き下げが行われ、最終的には後発医薬品の加重平均価格と同水準まで調整されることになります。

 表1は、2026年度の薬価改定により、後発医薬品と同水準(後発医薬品価格の加重平均値の1.0倍)に到達する見込みのおもな長期収載品です。降圧薬、消化性潰瘍治療薬、脂質異常症治療薬など、薬局で日常的に取り扱われる医薬品も含まれ、その薬価水準の変化は実務運用にも影響する可能性があります。

2026年薬価制度改革の注目点
G1ルール適用が「10年→5年」に短縮

 今回の薬価制度改革における注目点の1つは、G1ルールの適用時期が前倒しされることです。従来は、後発医薬品の上市から10年を経て適用されていましたが、2026年度改定からは5年へと短縮されます。

 また、従来は後発医薬品の置換率などに応じてG1以外にG2、Zなど複数の区分が設けられていましたが、G1ルールを軸とする体系へ再編されます(図)。制度構造がシンプルになる一方で、後発医薬品収載後、長期収載品の価格調整は従来よりも早期に進んでいくことになります。

 さらに、バイオシミラーが収載されているバイオ先行品についてもG1ルールが適用されることとなりました。これまでは、バイオAGが収載された場合に限り適用されていましたが、バイオシミラーへの置換えが一定程度進展している状況を踏まえ、適用が拡大されました(表2)

 これらの見直しの背景には、長期収載品の薬価の更なる適正化を通じてイノベーションの推進を図りたいという意図があります。後発医薬品への置換え促進とともに、価格調整の加速化は、メーカー側の品目整理や市場からの撤退を促す側面もあります。薬局においては、安定供給を見据え、市場環境や供給の動向をより一層注視しておくことが重要になるとも考えられます。

実務への影響 懸念事項を整理する

 今回の薬価制度改革が、日常の薬局業務にどのような影響を及ぼすか。選定療養や在庫構成の考え方など、実務に関連するおもなポイントを推察します。

 2024年10月より導入された長期収載品に関する選定療養では、患者の希望により長期収載品を選択する場合、「特別の料金」を患者が負担します。この特別の料金は、これまで長期収載品と後発医薬品の価格差の4分の1相当となっていましたが、2026年度調剤報酬改定において2分の1相当へと引き上げられます。

 一方、G1ルールの適用により後発医薬品と同薬価となった長期収載品については、差額が生じないため、特別の料金は発生しません。G1適用の時期前倒しに伴い、同薬価水準に達する品目が従来よりも早まる点には留意する必要があります。

 薬価改定時には、後発医薬品と同薬価となる長期収載品を正確に把握し、選定療養の説明内容を適切に見直す必要があります。特に負担額の変化は患者の困惑を招きやすいため、患者説明時にトラブルが生じないよう現場で情報を共有し、対応・認識の統一を図っておくことが重要になるでしょう。

 2026年度改定では、施行時期の違いにも注意が必要です。薬価改定は4月、選定療養の負担額の見直し等を含めた調剤報酬改定は6月に施行されます。このため、後発医薬品と同薬価(あるいは安価)まで引き下げられた長期収載品は、4月時点で選定療養の対象から結果として外れる一方、価格差が残る品目の負担増は6月から適用されるなど、4月と6月で段階的に取り扱いが変わることになります。レセコン等の設定についても、こうした施行時期のズレが適切に反映されているか確認しておくことが望まれます。

2) 長期収載品を取り巻く市場環境の変化と在庫管理の視点

 近年、後発医薬品を中心に供給不安が断続的に発生し、薬局現場では代替品確保や分譲といった対応が続いています。長期収載品の価格が後発医薬品と同水準となることで、後発医薬品の供給が不安定な品目では在庫の選択肢として採用しやすくなり、長期収載品の位置づけが相対的に高まる可能性もあります。

 もっとも、薬価制度の基本方針が後発医薬品の使用促進であることは変わりません。薬局としては後発医薬品を基本軸としつつも、価格、供給状況、安定性、患者ニーズなどを総合的に勘案し、在庫構成を検討する視点が従来以上に求められることになるとも考えられます。

求められる薬局の対応
供給体制も評価される時代に

 2026年度調剤報酬改定では、「後発医薬品調剤体制加算」は廃止され、「地域支援・医薬品供給対応体制加算」へと統合されました。評価の焦点は、後発医薬品の使用割合のみならず、「欠品させない体制」「地域内での分譲対応」など安定供給への取り組みに広がり、地域医療を支える供給体制の整備そのものが評価対象となる局面に入っているといえます。

 供給不安への対応が常態化している昨今では、日々の入荷状況や出荷調整といった情報に応じた判断が求められ、対応に追われている実情があります。各薬局においては、安定供給を確保しながら、制度の方向性を踏まえた実務上の整理を並行して進めるという複雑な課題に、引き続き向き合っていくことになるとみられます。