監修
ネグジット総研 薬局経営コンサルタント
津留 隆幸 氏

診療報酬が改定され令和8年6月1日に施行されます。今回、診療報酬全体としては+3.09%のプラス改定となったものの、調剤報酬だけをみると決して楽観できない内容となっています。具体的に何がどう変わったのか、そしてこれから薬剤師が目指すべき方向性は果たしてどのようなものなのか。調剤報酬の改定のポイントと、そこから見える調剤薬局の将来像について、薬局経営のコンサルタントの津留隆幸氏に解説いただきました。


調剤薬局は立地依存から脱却せよ
門前薬局と大型チェーン薬局に厳しい評価

 今回の調剤報酬改定のポイントとしてまず挙げられるのは、敷地内薬局や門前などの立地に依存した形態に対して、明確にノーを示す内容となったことです。

 2015年に患者のための薬局ビジョンが発出されてから10年余、立地依存からの脱却が求められてきました。調剤報酬でもそれを後押しするべく、改定のたびに門前形態の薬局には厳しい点数評価となってきたにも関わらず、門前薬局の数は減るどころかむしろ増え続けているのが実情です。

 保険点数が下がることで単価が下がったとしても、対人業務の充実で単価を上げる努力をする面薬局よりも、安い単価でも確実に収益が見込める門前を選択するケースが多いというのが現実であり、それだけ薄利多売のビジネスモデルが強固であるということを意味します。この10年の状況の変化の乏しさを改善するために、さらにハードルを引き上げた評価体系を示したのが今回の改定なのです。

 具体的な改定内容としては、調剤基本料2および3の適用範囲の拡大が挙げられます。併せて、門前形態の新規出店を強く抑制すべく「門前薬局等立地依存減算」が新設されました。現時点では、同減算や基本料2の特定の新要件について、既設の薬局は経過措置として適用から除外されています。しかし、「当面の間」という表現からは、将来的には既存店へも網を広げ、門前モデルの包囲網を強めていく国の意図が読み取れます。

 改定前と改定後の調剤基本料を表1に示します。2026年度改定において、調剤基本料1〜3はそれぞれ1〜2点のプラス改定となりました。しかしその一方で、特定の医療機関への依存度が高い門前薬局や大型チェーンに対する施設基準はさらに厳格化されています。これにより、これまで基本料1を維持してきた店舗であっても、基本料2や3(イ)への区分変更を余儀なくされ、実質的な減収を強いられるケースが増加すると予測されます。

都市部の門前形態の薬局を対象とした
新たな施設基準

 調剤基本料の改定内容を精査すると、重要な変更点として、調剤基本料2の施設基準に「都市部において、受付回数が600回超〜1,800回以下、かつ集中率が85%超」という区分が追加されたことが挙げられます。これは、大型チェーン薬局以外の中・小規模な門前薬局(敷地内薬局を含む)を新たに狙い撃ちにしたものと考えられます。

 ただし、経過措置として、令和8年5月31日までに開設し、改定後も継続して処方箋受付回数が1,800回以下であることを届け出済みの既存薬局については、当面の間、適用から除外されます。すなわち、本改定の直接的な対象となるのは、令和8年6月1日以降に都市部で新規開設し、受付回数600回超〜1,800回以下かつ集中率85%超という条件に該当する薬局です。

 従来、処方箋受付回数が月1,800回超〜2,000回未満かつ集中率95%以下の薬局は調剤基本料1を算定可能でしたが、今回の改定により、基本料2の判定基準が「集中率85%超」へと厳格化されました。

 このため、月1,800回以下の受付回数で届け出ている既存薬局は、新設された都市部特例(600回超〜1,800回以下かつ集中率85%超)の経過措置により当面は基本料1を維持できます。しかし、ひとたび受付回数が月1,800回を超えた場合には、集中率が85%を超えている限り、経過措置の対象外として調剤基本料2へ区分変更されることとなります。

 大型チェーン薬局については、これまで同一グループの合計の処方箋受付回数が月3.5〜4万回以下で処方箋集中率95%以下の場合、調剤基本料1の基準を満たしていましたが、今回の改定から処方箋受付回数が3.5万回超〜40万回以下、処方箋集中率85%超の薬局から全て調剤基本料3のイに含まれることとなりました。

門前薬局等立地依存減算により
門前薬局に厳しい評価

 さらに、門前形態の薬局については門前薬局等立地依存減算が新設されました(表2)。なお、この減算についても、令和8年5月31日までに保険指定を受けている薬局については、当面の間、減算の対象外となります。

 都市部において新規に門前薬局を開局した場合、前述の調剤基本料2(30点)の新区分に該当した上で本減算も適用されると、調剤基本料は30点-15点=15点となります。改定前に調剤基本料1として算定できていた45点と比較すると、30点の大幅な引下げとなり、経営への影響は極めて大きいといえます。

かかりつけ薬剤師
具体的な介入に対する評価に移行

 今回の改定では、かかりつけ薬剤師に関する見直しにとどまらず、服薬指導や在宅対応、残薬対策など、薬局における薬学的管理業務全体にわたり評価体系の整理が行われています。主な見直し項目を表3に示します。従来のような「かかりつけ薬剤師」という属性への一律の評価から、具体的な介入実績に応じた報酬体系へとシフトしている点が今回の改定の大きな特徴です。かかりつけ薬剤師の本来あるべき姿に基づいた評価体系へと転換されたと捉えることができます。

 この見直しに伴い、現場の業務フローにも大きな変化が求められます。これまでは同意書の取得を起点とする形式的な運用が先行しがちでしたが、今後は日々の服薬指導を通じて患者との信頼関係を構築することがより重視されます。その延長線上で、フォローアップや訪問指導といった具体的な介入が必要となった際に、患者の合意を得て実施するという流れへと変化していくと考えられます。

薬局の経営戦略の軸となる
かかりつけ薬剤師の機能

 こうした評価体系の見直しを踏まえ、かかりつけ薬剤師の評価に関する具体的な項目としては、かかりつけ薬剤師指導料が廃止されて服薬管理指導料に統合されたこと、かかりつけ薬剤師が継続的な服薬指導や訪問による服薬管理などを行った場合に算定可能な項目として、「調剤時残薬調整加算(かかりつけ薬剤師対応:50点)」、「薬学的有害事象等防止加算(かかりつけ薬剤師対応:50点)」、「かかりつけ薬剤師フォローアップ加算(50点)」、「かかりつけ薬剤師訪問加算(230点)」が新設されたことなどがあげられます。

 受付1回につきに算定が可能であった「かかりつけ薬剤師指導料(76点)」が廃止されたインパクトは大きく、現場には動揺も広がっています。「服薬管理指導料」では、かかりつけ薬剤師か否かで「イ」と「ロ」に区分されているものの、両者の点数が同一に設定されたため、一見するとかかりつけ薬剤師への評価が後退したように映るかもしれません。

 しかし、これは評価の引き下げではなく、かかりつけ機能をさらに推進させるための評価軸の転換と捉えるべきです。今後は、一律の指導料ではなく、具体的な介入実績に応じた加算体系へと報酬の重みがシフトしています。薬剤師個人がこの意図を正しく理解することはもちろん、国や各組織のマネジメント層もこの変革の意義を明確に発信し、一丸となって取り組んでいくべき重要な課題だと言えます。

 経営的な観点で今回の改定内容を紐解くと、今後は集中率に依存せず、いかに処方箋枚数を確保できるかが極めて重要になります。患者さん一人ひとりとの信頼関係を構築し、他科の処方箋も併せて任せてもらえるかかりつけとしての機能を強化する必要があります。将来的に、より手厚いサポートが必要になった際には、かかりつけ薬剤師として深く関わっていく。そうした一人の患者さんへの真摯な対応を通じて、ご家族や周囲の方々の処方箋も任せていただけるようになり、地域での信頼が口コミのように広がっていくことも期待できます。経営層にとっても薬剤師個人にとっても、こうした地域に選ばれるという視点を持って取り組んでいくことが、これからの時代を生き抜く鍵となるはずです。

服用薬剤調整支援料2を算定可能な薬剤師

 「服用薬剤調整支援料2」については、かかりつけ薬剤師であることが算定の前提となり、さらに特定の要件を満たした場合には1,000点の算定が可能となりました。ただし、これはすべてのかかりつけ薬剤師に認められるものではありません。日本老年薬学会が提供する老年薬学服薬総合評価研修会の修了、あるいは同学会が定める老年薬学認定薬剤師の資格を有していることが条件となります。

 これまでは、要件を満たしたばかりの若手から、JPALSのクリニカルラダーでレベル6を取得しているようなベテランまで、かかりつけ薬剤師であれば一律に評価されてきました。しかし、今回の改定によって、個々の専門性の違いが初めて点数の差として明確に評価される形となったのです。資格取得のハードルは決して低くありませんが、これは国が示す理想の薬剤師像や、かかりつけ薬剤師としての最終的な到達目標が明示されたものと言えるでしょう。目指すべき専門性のベクトルが、報酬体系を通じてより鮮明になったのではないでしょうか。

調剤管理料
中間処方の評価がマイナスに

 経営的な影響が最も大きいという声が多いのは「調剤管理料」の改定です(表5)。特に在宅医療に注力している薬局にとっては深刻です。在宅時医学総合管理料の算定ルールもあり、訪問診療は月に2回の頻度で行われることが多く、それに伴い在宅患者さんへの処方も14日分が主流となっているのが実情です。しかし、今回の改定で調剤管理料の日数区分が「28日以上か否か」の2つに集約されました。

 これにより、14日処方の点数はこれまでの28点から10点へと引き下げられ、内服薬1剤につき18点のマイナスとなります。この影響により月間で100万円超の技術料が減少したという店舗の悲痛な声も実際に耳にしています。一方で、28日処方の場合は従来の50点から60点へと10点プラスになりますが、27日以下の処方は一律で10点に据え置かれます。結果として、処方箋が28日以上にシフトすれば増収となりますが、訪問診療のサイクルや医師の処方方針に左右されるため、薬局によってプラスかマイナスかが明確に分かれる非常にシビアな改定内容と言えます。

地域支援・医薬品供給対応加算で
地域支援体制を総合的に評価

 後発医薬品についてはその使用が定着しつつあり、その一方で、近年の医薬品の供給不安により追加的な業務が生じています。その状況を踏まえ、後発品の使用割合を評価する後発医薬品調剤体制加算を廃止し、地域支援体制を評価する地域支援体制加算と合わせて「地域支援・医薬品供給対応加算」として地域での医薬品の供給体制を評価するように変更になりました。

 後発品の使用割合が85%以上であることを前提として、医薬品の安定供給を確保するために必要な体制を有している施設に対して加算1として新たに27点が設定され、従来の地域支援体制加算1〜4の点数が加算される形となっています。

 既に使用割合が85%超の薬局で地域支援体制加算を届出していた薬局においては、改定前後比較で1点もしくは3点のマイナスとなる一方で、地域医療に貢献する体制として求められる実績要件は大きな変更はなく、クリアの難易度は大きく変化していません。

目指すべき薬局像と個人としての取り組み

 門前に出店すれば十分な利益が得られた時代は、いよいよ終焉を迎えたと言えるでしょう。今回の改定では、都市部における小規模な門前薬局の乱立を抑制するため、極めて厳しい点数配分が行われました。将来的には既存の門前薬局数そのものを整理し、面分業へと強力にシフトさせるという国の不退転の決意が読み取れます。

 こうした状況下で中長期的な経営戦略を練るならば、算定可能な加算を確実に取得して単価を積み上げた上で、処方箋枚数をどの程度伸ばす余地があるかを極めてシビアに見極める段階に来ています。

 特に「集中率85%」という基準が大きな分水嶺となります。これをクリアするために他科の処方箋をどれだけ集める必要があるのか、月単位、あるいは1日単位の具体的な数値目標にまで落とし込んで検討することが不可欠です。その上で、現行の立地で事業を継続することの妥当性についても、改めて冷静に判断を下すべき時期に差し掛かっています。

 その際、検討すべきは「保険調剤」という枠組みだけで経営を完結させるべきか、という点です。ビジネスの視点に立てば、保険調剤にのみ固執する必要はありません。施設経営との連携やサプリメント、OTC医薬品の販売、さらには全く新しい付加価値サービスの創出など、プラスアルファの展開をセットにして、次世代の薬局モデルを構築していく。そうした広い視野でのチャレンジこそが、今、求められているのではないでしょうか。

他科処方箋を増やすためにできること

 他科の処方箋を増やすためには、まず地域社会で自局の存在を正しく認識してもらうことが不可欠です。地道ではありますが、地域コミュニティのイベントへの参画やポスティングなどの広報活動を継続し、薬局の露出を高めていくことで、数ある競合の中から選ばれる確率は確実に上がります。

 並行して、提供するサービスの質を向上させ、リピート率を高める施策も重要です。例えば、LINE公式アカウントを活用して患者さんと直接つながる仕組みを構築したり、ICTを用いたフォローアップ体制を整備したりすることも有効な手段となります。加えて、Webサイトの最適化や口コミ対策など、デジタル領域においても取り組める余地は多分に残されています。他業界では収益向上のために当然のように行われているマーケティング施策が、保険薬局業界では未だに浸透していないのが実情です。裏を返せば、ここには大きな伸び代があると言えるのではないでしょうか。

薬剤師個人として何ができるのか

 今、薬局には大きな変革が求められています。生き残る薬局、そして選ばれる薬剤師となるためには、目の前の患者さんに対して、医療の担い手としていかに満足度の高いサービスを提供できるかが問われています。患者さんのヘルスケア全般を包括的にマネジメントするという強い気概を持つことが、これまで以上に重要になるでしょう。

 将来的には、薬剤師個人が口コミなどで可視化され、評価される時代が到来することも十分に予想されます。まずは地域コミュニティへの広報活動から着手するなど、自身の個としての発信力を高め、積極的に外の世界へ踏み出していく姿勢が不可欠です。その意味では、今回の改定で高度な専門性が評価された「服用薬剤調整支援料2」を算定できるような薬剤師が、変革の旗振り役となって周囲を牽引していく姿こそが理想と言えるのではないでしょうか。自らの専門性を磨き、地域に必要とされる存在へと進化し続けることが、次世代の薬局経営の要となるはずです。


津留 隆幸 氏
株式会社ネグジット総研経営コンサルタント。大阪府立大学大学院修了後、東証一部上場のコンサルティング会社を経て、現在は保険薬局専門のコンサルティング支援に従事。中期経営計画策定・人事制度改革・人材開発など実績多数。長年にわたり調剤報酬改定を研究し、YouTube「薬局経営支援チャンネル【ネグジット総研】」(登録者4,500人超)やブログ、講演、コラム執筆を通じて薬局業界の発展に貢献している。