「空気の層」をつくり、3つの「首」を暖めるのが、防寒のコツ
金属は熱伝導が大きいので素早く熱を逃がしてしまいます。そこで、魔法瓶ではステンレスなどを2重にし、その間に空気の層をつくることで、熱の伝わりを緩和しています。一方、鳥類や哺乳類では、毛皮や羽、脂肪などで体温の維持を図っています。特に水鳥の胸に生えている羽毛はたっぷり空気を含んでいて保温性に優れていることから、衣類や布団に利用されています。このように、熱の放出を抑えるためには、「空気の層」をつくることが重要で、その空気を暖めることができれば、よりいっそう防寒効果を高めることができます。
重ね着で防寒する場合、空気の層の前に、まず肌着の選択に留意する必要があります。綿100%の肌着は刺激が少ないため、肌トラブルの回避には有用とされています。また、綿は基本的に保温性が高い素材ですが、吸湿性が高く乾燥しにくいという特徴もあるため、肌着が濡れるほど汗をかく状況では体温を奪ってしまいます。近年は、汗を吸収し、その気化エネルギーを使って発熱させる「機能性インナー」が登場しました。暖房が効いた電車内や体を動かすシーンなど、冬でも発 汗への対応は重要で、機能性インナーは汗冷えによる体温低下を防ぐ上で有用とされています。綿100%の肌着の上に機能性インナーを着用する人もいるようですが、機能性インナーは肌の上に直接着込むことで最も効果を発揮します。
2枚目は、空気の層をつくるためにシルエットが少しゆったりした服を選びます。セーターやスウェットといったアイテムの場合、素材としては、保温性が高く空気も多く含むウールや裏起毛などが防寒の際はおすすめです。また、肌着の上にシャツを着る場合、3枚目に薄手のダウンベストなどを「インナーダウン」として着用する人も増えてきました。空気を多く含んだダウンを肌に近い場所で着ると、その空気が体温で暖められるため、保温力が高まります。
一番外側に着る服は、中の暖かい空気を閉じ込めるために、防水性や防風性に優れた素材が適しています。さらに、体表近くの太い動脈(首の頸動脈、手首の橈骨動脈、足首の脛骨動脈)は外気の影響を受けやすく、冷気にさらされると動脈血が冷たくなって体全体が冷えてしまいます。熱中症では頸動脈などを冷やすのが効果的ですが、これと同様のことが起こるのです。そのため、マフラーや手袋、レッグウォーマーなどを利用し、この3つの「首」を冷やさないようにすることも防寒のポイントです。
布団のかけ方も、重ね着の考え方を応用できます。毛布を下に敷き、羽毛掛け布団を直接体に掛けるか、その上にさらに真綿の掛け布団をかぶせる方法が最も暖かいと考えられます。ただし、布団内の温度を上げすぎるのは好ましくありません。寝具と体との間にできる空間の温・湿度を「寝床内気象」と呼び、快適な睡眠を得るためには、温度33±1℃、湿度50±5%が理想だとされています1)。室温に応じて布団の種類や素材の組み合わせを変えることが大切です。
1)中村 勤: 繊維と工業 2008; 64(12): 414-418